vol.110 とても頼りになるイオンクロマトグラフ仕様のProminence

株式会社フジクラ 市川 進矢 先生

2020年1月 発行
市川 進矢 先生

株式会社フジクラ
(ご所属・役職は2020年1月発行時)

私と液体クロマトグラフィーとの最初の出会いは,学生時代の研究室で有機合成を行っていた頃に遡ります。その研究室では,専らGC,GC-MS,及びNMRで分析を行っていましたが,合成した化合物の分離精製はTLC,シリカゲルのオープンカラム,及び分取用HPLCを用いていたものの,良く分からずにHPLCを使用していたため,その時を振り返ると恥ずかしくもあり,反省すべきこととして捉えています。

卒業後,配属された勤務先の研究室では糖類の合成を行うこととなり,合成した糖類はCaやPbの配位子交換カラム,及びイオン排除カラムを用い,HPLCは島津製LC-6Aを使用していました。当時は,クロマトパックによる感熱紙を用いたチャート出力のため,多検体を夜間に連続測定した翌朝は,私のチャートが実験室の床一面に広がっていました。そのため,私よりも先に出勤された勤務先の方々からお叱りを受けまして,そのことが今となっては懐かしい思い出の1つになっています。

それから数年が経過して,現在所属のフジクラに入社しましたが,無機分析と液体クロマトグラフィーを担当することになったものの,当時の弊社HPLCは老朽化が著しく,2台の他社製HPLCはコンディション不良が多発し,特に逆相系カラム用としていたHPLCによる測定はままならない状態であったため,大変苦慮しました。それに対し,所有HPLCの中で最も古いLC-6Aだけが元気に動いており,その堅牢性とLC-6Aとの久しぶりの再会に喜びを感じたことをつい最近の出来事のように覚えています。なお,他社製HPLCコンディション不良の話は,あくまで個人的な経験談ですので,その点ご容赦ください。

さらに数年が経ち,ようやく念願叶って全てのHPLCを更新することになりました。機種選定では,私個人のLC-6Aへの堅牢性イメージが強かったこともあって,装置は全てProminenceに統一することにしました。

その後,弊社の顧客ニーズとして電子材料のハロゲンフリー対応に伴うハロゲン分析の需要があり,その分析装置としてイオンクロマトグラフの前段に自動燃焼装置を接続した,燃焼イオンクロマトグラフ(以下,燃焼IC)が必要となりました。

この燃焼ICは,試料を燃焼ボートに秤量し,その燃焼ボート上の試料を燃焼させて吸収液に発生ガスをトラップした後,その吸収液をイオンクロマトグラフにて定量分析を行うもので,多検体の有機材料中に含まれるハロゲンと硫黄を自動的に分析できる装置です。

当初,本装置の後段には専用機としてのイオンクロマトグラフを導入する方向で考えていましたが,私共の分析所ではルーチン分析が非常に少ないだけでなく,弊社の顧客ニーズも年々変化することが予想されていました。そこで,HPLCをProminenceに統一していたこともあり,イオンクロマトグラフ仕様のProminenceにPDA検出器や低圧グラジエントポンプ等を追加し,通常のHPLCとしても使用可能な状態で燃焼ICを導入することとしました。

現在では,予想していたことではありますがハロゲンフリー対応が一段落し,ハロゲン分析を行う機会が以前より減ったものの,本装置は導入時に様々な用途への応用が利く仕様にしていた甲斐もあり,他の社内ニーズへ活用の場を広げています。

弊社主力製品の電線や電子部品等に使用される樹脂・ゴム材料には,様々な添加剤が含まれています。その添加剤を化合物の状態で定量分析出来れば良いのですが,抽出率の問題や前処理の煩雑さを考えると,添加剤に含まれる元素を定量分析し,元素濃度から添加剤の濃度を換算する方が効率的な場合があります。元素の定量分析は,対象となる材料や分析種に適した前処理を行った後,ICP-AESやICP-MSのより定量分析を行う場合もありますが,ICPが比較的不得手としているフッ素,塩素,臭素,及び硫黄が樹脂・ゴム材料に含まれることも多々あり,その時に前処理不要な燃焼ICが非常に役立っています。その一例として,燃焼ICによる電線被覆材分析を図1に示します。本結果では,電線被覆材に含まれるハロゲンと硫黄がイオン成分として検出されていますが,本法は装置立ち上げと試料の秤量のみで前処理は必要とせず,ハロゲンと硫黄を連続的に定量分析出来るため重宝しています。

また,弊社に導入したイオンクロマトグラフ仕様のProminenceは燃焼ICとしての役割だけでなく,水系試料の無機イオン分析に加え,イオン排除,逆相系,及びHILIC系カラム等を用いたHPLCとしての分析用途にも活用しており,とても頼りになる欠かせない分析装置となっています。

その一例として,逆相系カラムを用いた水系試料のアルデヒド類分析を図2に示します。本結果では,水系試料に含まれるホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが検出されていますが,本試料の場合は分解物として生成したアルデヒド類をモニタリングした事例です。その他,環境への配慮から電子材料や各種電線材料に関してアルデヒド類の分析を行う場合もあります。

最後になりますが,私は過去から現在に至るまでHPLCに限らず島津製作所には大変お世話になっている身でありますが,今回多くのHPLCユーザーが愛読するLCtalkへの寄稿の機会を頂けたことにつきまして,深く感謝申し上げます。

図1 燃焼ICによる電線被覆材分析

 

図2 水系試料のアルデヒド類分析

 

執筆者紹介

埼玉県草加市出身。電気通信大学電子物性工学科卒業,電子部品メーカー等で技術職を経験した後,株式会社フジクラに入社,化学分析業務に従事,現在分析技術部主席研究員。(公社)日本分析化学会液体クロマトグラフィー研究懇談会に所属し,専門委員としても活動中。

【専門分野】無機分析,液体クロマトグラフィー
【将来の夢】離島めぐり(国内)
【趣  味】ドライブ,音楽鑑賞など

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