ピーク形状の異常

分析の留意点

LCtalk92号 LAB

 HPLC 分析を行っていて,「あれ?このピークの形,おかしいぞ!」という場面に遭遇したことはありませんか?ピーク形状の異常は,日常分析でよく遭遇する問題のひとつです。クロマトグラムを見て,明らかに気が付くピーク形状の異常の例としては,図1 に示すようにピークのブロード化(極端なテーリングやリーディングも含む),肩ピーク(ショルダーピーク)の出現,ピーク割れがあります。

 これらの異常がクロマトグラム上のどのピークでも見られる場合,図2 に示すような原因が考えられます。今回は,これらピーク形状異常の主な原因について解説したいと思います。

図1. ピーク形状異常の例

 

図2. ピーク形状異常の主な原因
※ 特定のピークだけで異常が起こる場合,カラムや移動相の選択,
移動相調製などに問題があることも考えられます。

 

カラムの劣化

いつもと同じように分析しているのに,ある頃からピーク形状が図1 のようになった場合,カラムの劣化(汚れも含む)が最も疑われます。分析カラムの前にガードカラムを接続している場合には,ガードカラムを外してピーク形状を確認してください。もし,ピークが正常に戻れば,ガードカラムが犯人です。
カラムの劣化は,充塡状態の変化,夾雑成分の蓄積,微粒子の詰まり,固定相の脱離などによって起こります。充塡状態の変化は,長期間の圧力負荷や充塡剤基材の劣化(例えば,シリカゲルの溶解)により生じます。多くの場合,カラム入口に充塡剤のわずかな隙間ができ,これが肩ピークやピーク割れの原因となります。夾雑成分の蓄積や微粒子(試料溶液,移動相,ポンプ,試料導入装置などに由来)の詰まりは,カラムの入口側フィルターや入口付近の充塡剤で起こり,蓄積物への試料成分の吸着や微粒子による試料成分の流れの妨げにより,ピーク形状が変化します。また,固定相の脱離では,ピーク形状の変化以外に,保持時間の減少も起こります。
カラムの劣化が疑われる場合,カラムの洗浄を行います。カラムの洗浄方法は,使用しているカラムの取扱説明書に従ってください。洗浄で十分な効果が得られない時には,逆洗(カラム出口側から洗浄液を低い流量で送液して洗浄する)することもあります。ただし,逆洗可能かどうかは,必ずカラムの取扱説明書などで確認してください。これら洗浄で回復しなければ,カラムの寿命ということになります。

試料溶媒や注入量が不適切

前処理や分析種濃度の関係で,試料溶媒組成や注入量を変更したらピークの形がおかしくなった・・・という場合です。まずは,従来の試料溶媒と注入量でピーク形状を確認してください。
図3 に,試料溶媒組成がピーク形状に与える影響の例を示します。 (a) と (b) のクロマトグラムは,2種類の試料溶媒で調製した標準混合液を同一装置で分析した結果です。 (b) のクロマトグラムだけを見ていると気が付きませんが, (a) と比較すると (b) のピークが明らかにブロードになっていることがわかります。 (a) の試料溶媒「水 / アセトニトリル = 3/1」は,移動相である「くえん酸緩衝液 / アセトニトリル = 3/1」と同じ有機溶媒比率ですが, (b) の試料溶媒は逆相モードにおける強溶媒であるアセトニトリルのみです。この例のように,試料溶媒中の強溶媒比率が高くなると,ピーク形状に影響を与えることがあります。
図3 試料溶媒がピーク形状に与える影響
試料注入量は,カラム分離の「一段目」における試料ゾーンの広がりに関係しますので,注入量の増加はピークのブロード化につながります。特に,試料溶媒中の強溶媒比率が高いほど,その影響は大きくなります。

配管のデッドボリューム

いつもと違う配管(内径は同じ)を使ったらピークがブロードになった・・・という場合,試料が通過する配管接続部(試料導入装置~カラム~検出器)でのデッドボリュームが疑われます。図4 に,デッドボリュームの例を示します。

図4 配管接続部のデッドボリューム

コネクターの先から出る配管チューブの長さは,メーカーによって異なることがあります。特に,カラムとの接続部は重要です。新たに配管を接続する際には,配管チューブを受け側の奥に押し当てながらコネクターを締めるようにしましょう。

カラム内の温度勾配

カラム内径が大きい時,流量がはやい時,カラム温度が高い時などで,移動相が十分熱せられないままカラム内を流れると,カラムの断面方向に温度勾配(カラム中心部温度がカラム内壁付近より低くなる)ができます。これがピークブロード化の原因に なることがあります。
温度勾配の影響は,試料導入装置からカラムまでの配管チューブ(SUS)を長くして,カラムオーブン内で移動相を予熱することにより抑えることができます。ただし,この予熱チューブにおけるピークの広がりもありますので,内径と長さを最適化する 必要があります。

検出器のレスポンス設定が不適切

一般に検出器は,レスポンス(時定数とも呼ぶ)の設定を変えることにより,ノイズを低減できるようになっています。このレスポンスは,遅くするとノイズが小さくなり高感度分析に有利ですが,反面ピークがブロードになります。図5 に,レスポンスがピーク形状に与える影響の例を示します。

図5 レスポンスがピーク形状に与える影響

図5 を見ると,溶出のはやいピークほどレスポンス設定の影響を受けているのがわかります。念のため,分析前にはレスポンスの設定値も確認しましょう。

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