包括的2次元LCのはなし

分析基礎

LCtalk83号入門

●多次元クロマトグラフィーとは?

“ 多次元クロマトグラフィー(multidimensional chromatography)”は,複数のクロマトグラフィーや 分離モード,カラムなどを組み合わせて用いることによ り,多成分を分離する手法で,通常の1 次元分離と比較 してはるかに高い分離能力が得られます。HPLC におい ては,種々の分離モードとそれらに対応するさまざまな 移動相選択が可能であるため,これらの多彩な組み合わ せにより,1 次元分離だけでは得られない選択性が得ら れる可能性を秘めています。 多次元クロマトグラフィーには,溶出液が一旦適切な 場所に分取(溜め置き)され,その一部または全量が次 のカラムに注入されるオフラインタイプと,溶出液の一 部または全量がそのままサンプルループなどを介して次 のカラムに送られて自動分析されるオンラインタイプが あります。前者では,一旦分取した溶出液に対し,溶媒 の転溶や濃縮などのハンドリングが加えられます。

●包括的2 次元LC とは?

HPLC における多次元クロマトグラフィーの中で,広 く使用されているのが,“2 次元LC(two-dimensional LC)”で,“LC × LC”などとも呼ばれます。 この2 次元LC の内,1 次元目カラムからの溶出液を オンラインですべて2 次元目カラムに導入し,包括的 に試料の2 次元分離を行う方法が“包括的2 次元LC (コンプリヘンシブ2 次元LC,comprehensive twodimensional LC)”なのです。

●包括的2 次元LC システムの構成

図1 に,包括的2 次元LC システムの構成例を示します。 このシステムでは,1 次元目,2 次元目ともにグラジエ ント溶離が可能となっています。試料溶液は試料導入部 (オートサンプラー)から注入され,1 次元目カラムによ り分離されます。1 次元目カラムでは,一般に低い流量(例 えば, 50 μL/min)で,長い時間をかけて分離が行われ ます。1 次元目カラムからの溶出液は,流路切換バルブ のループに送られ,ループが一杯になった後(この例では, ループは100 μL なので,流量 50 μL/min なら2 分間 で満たされます),バルブ切り換えにより,順次2 次元 目カラムで分離されます。この例では,バルブが2 分毎 に切り換わりますので,2 次元目カラムでの分析(グラ ジエント溶離の場合,カラム平衡化時間も含む)は,2 分以内に終了している必要があります。 近年では,この2 次元目カラムに超高速LC(UHPLC) 用カラムが使用されるようになり,わずか1 分程度でも, 十分な高分離が達成できるようになってきました。

包括的2 次元LC システムの構成例

図1 包括的2 次元LC システムの構成例

●包括的2 次元LC による分析例

図2 に,牛血清アルブミンのトリプシン消化物を包括 的2 次元LC システムで分析した例を示します。1 次元 目にはイオン交換カラム(内径 1 mm ×長さ 50 mm, 流量 50 μL/min),2 次元目には逆相カラム(内径 2 mm ×長さ 50 mm,流量 600 μL/min)を用いて分離 を行いました。縦軸方向(2 次元目)にピークが並ぶのは, 1 次元目で分離できず,2 次元目により分離ができたこ とを意味しています。このように,包括的2 次元LC は, 1 次元で分離できない成分を2 次元目で分離できる高い 分離能力をもつ手法であると言えます。 (Yo)

包括的2 次元LC システムによるペプチドの分析例

図2 包括的2 次元LC システムによるペプチドの分析例
   (牛血清アルブミンのトリプシン消化物)

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