多次元クロマトグラフィーとは?

"多次元クロマトグラフィー(multidimensional chromatography)”、複数のクロマトグラフィーや 分離モード、カラムなどを組み合わせて用いることにより、多成分を分離する手法です。通常の1次元分離と比較し、高い分離能力が得られます。HPLC では、種々の分離モードとそれらに対応するさまざまな 移動相選択が可能であるため、これらを組み合わせることによって、1次元分離だけでは得られない選択性が得られる可能性があります。
 

包括的2次元LCとは?

HPLC における多次元クロマトグラフィーの中でも広く使用されているのが、”2次元LC(two-dimensional LC)”で、"LC × LC” などとも呼ばれます。 この2次元LC の内、1次元目カラムからの溶出液をオンラインですべて2次元目カラムに導入し、包括的に試料の2次元分離を行う方法が "包括的2次元LC(comprehensive two-dimensional LC)"です。

1次元クロマトグラムと多次元クロマトグラムの違い

図1 1次元クロマトグラムと多次元クロマトグラムの違い

包括的2次元LCシステムの構成

図2に、包括的2次元LCシステムの構成例を示します。このシステムでは、1次元目、2次元目ともにグラジエント溶離が可能です。試料溶液は試料導入部(オートサンプラー)から注入され、1次元目カラムにより分離されます。 1次元目カラムでは、一般的に低流量(例えば50 μL/min)で長い時間をかけて分離が行われます。1次元目カラムからの溶出液は、流路切換バルブのループに送られます。ループ容量が100 μLで流速50 μL/minの場合であれば、溶出液がループに満たされるのにかかる時間は2分です。ループに溶出液が満たされると、バルブが切り換えられて2次元カラムにこの溶出液が導入されて分離されます。バルブは2分毎に切り換わりますので、2次元目カラムでの分析(グラジエント溶離の場合、カラム平衡化時間も含む)は2分以内に終了している必要があります。

近年では、この2次元目カラムに超高速LC(UHPLC:ultra high performance liquid chromatography)用カラムが使用されるようになり、わずか1分程度でも十分な高分離が達成できるようになってきました。

包括的2次元LCシステムの構成例

図2 包括的2次元LCシステムの構成例

包括的2次元LCによる分析例

図3 に包括的2次元LCを用いて葛根湯エキス顆粒の分析例を示します。 
試料は、1次元目ではセミミクロスケールの逆相モードのカラム (100 mm × 1.5 mm I.D., 2.2 µm) と中性pHの移動相、2次元目では超高速分析用の逆相モードのカラム (50 mm × 2.1 mm I.D., 2.7 µm) と酸性pHの移動相を用いました。

縦軸方向(2次元目)にピークが並ぶのは、 1次元目で分離できず、2次元目により分離ができたこ とを意味しています。このように包括的2次元LC は、 1次元で分離できない成分を2次元目で分離できる高い分離能力をもつ手法であると言えます。

Fig.3  包括的2次元LCによる葛根湯エキス顆粒の分析例

3 包括的2次元LCによる葛根湯エキス顆粒の分析例