4. 注入バルブ(6方バルブ)

オートサンプラには6方バルブ(注)が使用されている。 6方バルブのメーカーとしては,レオダイン社やバルコ社が良く知られているが,現在では他のメーカーおいても製作されている。

(注) 一般的に,6方バルブの耐久性能は,仕様で規定されている最大圧力に依存する。 このため,同じローターシール材質を採用している6方バルブの場合,最大圧力が高いほどメンテナンス頻度が増加する。 また,ローターシールの寿命(耐磨耗性能)は,6方バルブ製作時の締め付け圧力によって決まり,分析時の送液圧力によって決まるのではない。 なぜならば,移動相を送液する/しないに関わらず,バルブ製作時に調整した締め付け圧力は,ローターシールに常時かかっているためである。 これは,マニュアルインジェクタにおいても同じである。

5. シリンジ計量法

6方バルブを使ったサンプル計量機構としては,シリンジ計量法(partial-loop injection)が最もポピュラーである(注)
図のように,LOADでは,送液ポンプとカラムが直結しており,この状態でサンプルがサンプルループの中へ押し込まれる。 続いてローターシールが右に回転してINJECTになると,移動相はサンプルループ内部を通過し,サンプルと共にカラムへ流れこむ。

(注) 弊社LCでは,SIL-20A(HT) / SIL-HT / LC-2010(HT) / SIL-10ADvp等の場合,シリンジではなくプランジャで計量しているが,ここでは両者をあわせてシリンジ計量法と呼ぶ。

6. サンプル押し込み方式

- 十分なサンプルを用意できる場合,サンプル押込み方式 (push-to-fill design)によって無駄になるサンプル量は問題にならない。 しかし,わずかなサンプルしか用意できない場合,10μLの無駄は無視できない量である。 -

シリンジ計量法にはいくつかの注入方式がある。 そのひとつが,ここで紹介しているサンプル押込み方式(注1)(push-to-fill design)であり,これはマニュアルインジェクタによる注入作業を自動化したようなものである。
図のように,ニードルがサンプルバイアルの中に入ると,シリンジはサンプルを吸引し,そしてニードルシール(注2)へ移動する。 続いてシリンジは,吸引しているサンプルをサンプルループの中へ押し込む.そして,6方バルブのローターシールが回転し,分析がスタートする。 このサンプル押込み方式では,ニードルシールとサンプルループとの間を接続している配管にサンプルが残ってしまう。 このため,注入量に加えて10μL程度の余分なサンプル,つまり無駄なサンプルをあわせて吸引しておく必要がある。

(注1) 弊社LCでは,SIL-10AF/SIL-10AP等がこの方式に相当する。 上記5項「シリンジ計量法」の図は,このサンプル押し込み方式の6方バルブ流路図を示している。
(注2) ニードルシールとは,ニードルが突き刺さるところに使われている樹脂製部品であり,液が通過する貫通穴があいている。 突き刺したニードルはこの部品でシールされ,そしてこの部品を介してニードル流路と6方バルブ流路とがつながる。

7. ダイレクト注入方式

- ダイレクト注入方式では,ニードルがサンプルループ流路の一部となっているため,吸引したサンプルを無駄にしない。 つまり,吸引したサンプルの100%がサンプルループへ導入される。 -

もうひとつのシリンジ計量法がダイレクト注入方式(integral needle-loop design)であり,多くの分析室において,この方式を採用したオートサンプラが導入されてきている。
図のように,この方式では,ニードルとサンプルループとが一体になった構造をとっている(注1)。 この注入動作では,ニードルがニードルシールから離れ,サンプルバイアルの中に入り,そしてシリンジがサンプルをニードル~サンプルループへ吸引する。 続いて,ニードルがニードルシールに戻った後,6方バルブのローターシールが回転して分析がスタートする(注2)

(注1) 弊社LCでは,SIL-20A(HT) / SIL-HT / LC-2010(HT) / SIL-10ADvp等がこの方式に相当する。
(注2) ダイレクト注入方式では,送液ポンプから送られてきた移動相がサンプルループとニードルを通過し,そしてカラムへ流れ込んでいる。 つまり,サンプルループとニードルは,分析中あるいは分析待機中において,インライン(in-line:流路の一部)としての働きをしていて移動相で洗浄される。 一方,ダイレクト注入方式以外の注入方式では,ニードルはオフラインである。