分取HPLCのはなし・・・ スケールアップ

分取HPLCのはなし その1

1) 溶離液組成の確認

 条件が確立された分析スケールでは問題なくても,スケールアップして分取を行なう際に問題が発生するケースがありますので,溶離液の再確認が必要です。

 目的の分取量によっては,効率よく分取するために高濃度の試料を大量に注入するケースがあります。 化合物によっては,分析スケールでは溶離液に十分溶解するが,分取スケールでは溶離液への溶解度が不足する場合があります。 その場合は,溶離液組成や分離モードを見直す必要があります。

 一方,分取物は溶離液に溶解した状態で得られますから,後処理(濃縮・精製,他の分析機器で解析など)においてそれが問題にならないようあらかじめ考えておく必要があります。 分取した溶液を蒸発乾固することを考えれば,溶離液はなるべく不揮発性の塩を含まない組成にしておくことが重要です。 分析用HPLCではりん酸が多用されますが,分取HPLCではその代わりにぎ酸・酢酸・トリフルオロ酢酸などが使用されることが多いようです。 また,逆相モードにおいてはできるだけイオンペア試薬を使わない,水リッチよりは有機溶媒リッチな組成にする,といった工夫が必要となります。 分取後にバイオアッセイを行なう場合には,その妨害となるもの(例えば毒性の高い溶媒など)を溶離液に添加しないことも重要です。

2) スケールアップの基本的な考え方

 基本的には,後述するように分析条件をそのままサイズだけ大きくして分取しますが,試料によっては溶離液への溶解度不足により困難な場合があります。 限界負荷量の見極めで説明しましたように負荷量を増大していき,10-100mg/cm2の注入が可能であることを確認した上でスケールアップをしてください。


 コンベンショナルからセミ分取,あるいは分取サイズにスケールアップする場合,基本的には,充てん剤が同じなら,カラムの断面積に比例して溶離液流量と試料負荷量を増やすことによりほぼ同等の分離が得られると考えられます。 
 同一充てん剤のカラムを使用してスケールアップした例を下図に示します。ここで、分析スケールでは内径4.6mmのカラムを、分取スケールでは内径20mmのカラムを使用しています。 内径20mmカラムの断面積は内径4.6mmカラムの約19倍であるため、送液流量を0.8mL/minから15mL/minにスケールアップするとともに、試料注入量を50μLから1mLへスケールアップしています。 その結果、ほぼ同等なクロマトグラムのパターンを得ることができました。
 充てん剤の性質が類似し,内径の異なるカラムをセットで入手できる場合には,容易にスケールアップを行なうことが可能です。

分析から分取へのスケールアップ例

分析から分取へのスケールアップ例

1.Benzoic Acid
2.Benzene
4.Naphthalene

 また,分取スケールでは注入量が20倍になっているにもかかわらず,両者の感度・面積値がほぼ等しくなっています(Naphtaleneは除く)。 これは,溶離液流量比もほぼ同じ倍率に設定されていることによりその分だけ溶離液によって希釈され,結果としてほぼ同濃度の成分バンドが検出セルに同時間滞留しているためと考えられます。

3)カラムと装置の選択

■カラムと溶離液流量

 コンベンショナルサイズでの限界負荷量と目的の分取量を比較して,適切な内径のカラムを選択します。 カラム断面積に応じて,上述のスケールアップの基本的な考え方に沿って溶離液流量を決めます。
内径4.6 mm,溶離液流量1.0 mL/minをベースに,種々のカラムでスケールアップを行なったときの断面積比と設定流量例を表に示します。

カラム断面積と流量との関係

カラム断面積と設定流量との関係

 実際には溶液の粘性やカラム耐圧の問題から,分取カラムに対して上に示した流量を通液することができない場合があります。 その場合は,逆に分取カラムでの流量を先に決定し,コンベンショナルカラムでの流量を後からそれに合わせて決めるとよいでしょう。

■送液ユニット

以下に,分析/分取スケールでの標準的な流量と対応可能な送液ユニットの関係を示します。 決めた溶離液流量に合わせてポンプを選択します。 HPLC用送液ユニットにはそれぞれ最大設定流速が定められており,実際にはその1/2~2/3を上限に使用することが望ましいです(高流量での連続使用は,プランジャシールの劣化を早めます。)。

カラム流量と対応可能な送液ユニット

流量と対応可能な送液ユニット

■インジェクタ

 試料注入量も断面積比に応じてスケールアップし,注入量に適したインジェクタを選択します。
 マニュアルインジェクタの場合は,“7725i”(または “7725”,共にレオダイン社製)と,様々な容積のサンプルループを用意しておけば分析スケールでも分取スケールでも対応できます(注入量が5mLを超える場合は,分取専用の”3725(レオダイン社製)”がお勧めです)。
 オートサンプラの場合は,機種により最大注入量が異なり,オプションによる注入量設定範囲の変更範囲も異なっています。 お手持ちのオートサンプラでも,オプションのサンプルループを使うと,注入量を増やすことができるかもしれません。 一度ご確認ください。

分取システムで用いられるオートサンプララインナップ

型名 特長・用途 注入量/μL
(max:オプション使用時)
主な接
液材質
SIL-10AF ループ計量方式(シリンジ計量方式)の注入が可能です。推奨する注入量範囲は,2000μLまでです。 1~50 (max5,000) SUS
SIL-10AP 5mLまでの注入が標準で可能です。セミ分取,GPCクリーンアップ,濃縮システムなどに適します。 1~5,000 SUS
SIL-10Ai 流路が塩酸やハロゲンに耐性があるPEEK製ですので,そのような溶離液を利用する場合に適します。 1~50(max250) PEEK
SIL-20A ダイレクト注入方式で,コンベンショナルサイズに適しています。 微量注入時の再現性や正確さに優れ,クロスコンタミネーション(キャリーオーバー)を最小にするニードル洗浄機能を標準で搭載しています。 0.1~100 (max2000) PEEK,(SUS)
*オートサンプラ詳細

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