イオンクロマトグラフィーQ&A ■ イオンクロ豆知識

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Q: 陰イオン分析における陽イオン,陽イオン分析における陰イオンはどこに溶出しますか?(お問い合わせ番号 IC0701)
A: 同じ荷電を持つイオン交換基との静電的反発により,非保持の位置に溶出します。


 クロマトグラム上に最初に現れるピークは「ウォーターディップ」と呼ばれ,巨大な負ピークとして観察されることが多いようです (陰イオン分析の場合)。イオンクロマトにおける試料は希薄な水溶液であることが多く,緩衝液である溶離液よりもバックグラウンド電気伝導度が小さいために,その電気伝導度の小さいゾーンがカラムを素 通りして出てくるものと説明されています。
 しかし,試料によっては単純な負ピークにはならず,この位置で検出応答が激しく上下することもあります。これには様々な要因があり,定量的な解析は一般に大変困難です。その要因のひとつとして,陰イオン分析においては陽イオンが,陽イオン分析においては陰イオンがこの位置に溶出していることが挙げられます。

 陰イオン分析を例にとれば,イオン交換基が正の荷電を持ちますから,陽イオンはこれと反発して樹脂に近づけないことになります。これをDonnan排除といいます。このことにより,陰イオン分析において陽イオンは非保持の位置に溶出します。

 
Q: 分析項目として「硝酸態窒素」「りん酸態りん」といった言葉をよく聞きますが,硝酸イオンやりん酸イオンを分析した場合とは何が異なるので すか?(お問い合わせ番号IC0702)
A:
それらのイオンに含まれる窒素,りんといった元素の濃度を表現するときに用いられる用語です。


 天然水中における塩素やナトリウムといった元素の存在形態は比較的単純で,そのほとんどが塩化物イオン,ナトリウムイオンと考えられます。しかし,窒素は酸素原 子や水素原子と結合して硝酸イオン,亜硝酸イオン,アンモニウムイオンなどの形態をとったり,生物体中に取り込まれて有機物になったりと,様々な化学種になります。もちろんりんも同様です。
 これら異なる化学種の濃度を比較したり総窒素濃度を求めたりする場合,各化学種に含まれる窒素,りんなどの元素の濃度に換算した値を使うと便利です。例えば,総窒素濃度をペルオキソ二硫酸カリウムによる酸化分解法で,無機態 (硝酸イオン,亜硝酸イオン,アンモニウムイオン) の窒素濃度をイオンクロマトで求めておき,前者の 濃度から後者の濃度を差し引くことにより有機態窒素濃度の概算値を求める,といったことが可能になります。
 現状では,例えば硝酸イオンの濃度を「硝酸イオンとして○○mg/L」と表現する場合と,「硝酸態 (性) 窒素として××mg/L」と表現する場合の両方が混在しています。 混乱しやすいので,「硝酸態 (性) 窒素」の濃度を表記する場合は「NO3-N」のようにハイフンと元素記号をくっつけることになっています。間違えないようにしましょう 。
 なお,相互の濃度換算表を示しておきましたので参照してください。
 
1 NH4+ = 1.288 NH4+-N       1 NH4+-N = 0.776 NH4+
1 NO2- = 3.284 NO2--N       1 NO2--N = 0.304 NO2-
1 NO3- = 4.427 NO3--N       1 NO3--N = 0.226 NO3-
1 PO43- = 3.066 PO43--P      1 PO43--P = 0.326 PO43-