イオンクロマトグラフィーQ&A ■ 装置の設定・分析開始時の注意点

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Q: 溶離液をカラムに送液する際は,最初から分析時の流量で送液しても問題ありませんか?(お問い合わせ番号IC0301)
A: 最初は分析流量の半分程度で送液し,カラム温度が安定したら流量を上げるようにしましょう。


 一般に,カラムオーブンの温度が設定温度になるまでは流量を落として流すようにした方が安全です。 特に室温に比べて分析時の設定温度が高い場合には,カラムが温 まるまでは溶離液の粘性が高く,予想以上の圧力上昇が生じることがあります。 カラムに必要以上の圧力が加わると,場合によってはその分離能力が低下します。 カラ ムオーブンの表示温度が設定温度に達するまでは,分析時の流量の半分程度で送液することをお勧めします。
 なお,カラムにかけてもよい最大負荷圧は,それぞれのカラムの種類ごとに決まっています。 詳しくはカラムの取扱説明書をご参照ください。(参考:イオンクロマトグラフィーに用いるカラムの使用制限圧力 送液ポン プには圧力リミッター (設定した負荷圧を超えると送液停止する機能) がついていますので,圧力上限値をカラムの最大負荷圧と同じ値に設定しておくとよいでしょう。

 ところで,イオンクロマト用分離カラムに充填されている樹脂は,溶離液に含まれる溶媒の極性やイオン強度により,多少膨潤したり収縮したりすることがあります。  樹脂の急激な膨潤・収縮は,場合によってはカラム性能の低下につながりますので,注意が必要です。 頻繁に組成の異なる溶液に置換するのは避けるべきですが,どうし ても必要な場合はなるべく低い流量で送液・置換するのが適切といわれています。
 すなわち,日常の分析においてはもちろんのこと,異なる組成の溶液をカラムに流す場合にも,安定するまで低流量で送液するのはカラムに負担をかけない処置といえま す。
 

 
Q: 電気伝導度検出器のポラリティはどのように設定すればよいですか?(お問い合わせ番号IC0302)
A:
一般には,ノンサプレッサーの陽イオン分析のときのみマイナス,他はプラスと覚えておけばよいでしょう。


 イオンクロマトで使用する溶離液には必ず何らかのイオンが含まれており,充填剤表面のイオン交換基にくっついて平衡状態になっています。 そこへ試料として分析対 象イオンが入ってくると,その溶離液イオンとイオン交換基の奪い合いを行います。 その結果,分析対象イオンが検出器に入り込んだ時点においては,その分析対象イオ ンの濃度が増加しているのはもちろんのこと,あらかじめ溶離液に添加されているイオンの濃度は減少しています。

 一方「電気伝導度」という物理量は,溶液中に含まれる各イオンに固有の電気伝導度を引き上げる力 (当量電気伝導度) と,それらの濃度との総和によってほぼ決定しま す。
 例えば,分析対象イオンAと溶離液イオンMとが1対1でイオン交換を行っている状況を考えてみましょう。Aの溶出位置においては,その濃度の分だけMの濃度が減っていま すから,イオンの総量は変化していないことになります。したがって,溶液の電気伝導度はAとMとの当量電気伝導度の差の分だけ変化することになります。
 Mとして当量電気伝導度の小さいイオンを選択し,当量電気伝導度の大きいイオンAを測定すれば,Aの溶出位置では大きな正方向のピークが得られます。 一方,AよりMの 方が当量電気伝導度が大きい場合は,逆に負のピークを与えます。

 実際の溶離液中では酸・塩基の解離平衡に起因するイオンの濃度変化なども起こっているため,これほど単純ではありません。 サプレッサー方式では,サプレッサーに おけるイオンの出入りもありますから,さらに話が複雑になります。 が,ここでは「電気伝導度検出では目的イオンの溶出位置で負方向のピークが出ることもある」こと だけを押さえておけばよいでしょう。
 負の方向に出現したピークを見た目の上で正方向に描かせるために,電気伝導度検出器にはポラリティの設定機能があります。 通常はこれをプラスに設定しますが,ノ ンサプレッサー方式による陽イオン分析の場合には,分析対象イオンよりも溶離液イオン (この場合はH+) の方が当量電気伝導度が大きいため,負方向に出現す るピークを反転させるようポラリティをマイナスに設定します。(設定詳細は電気伝導度検出器の取扱説明書をご参照下さい)
 

 
Q: ブランクとして精製水を分析してみる必要はありますか(お問い合わせ番号IC0303)
A: 一連の測定の中で一度は実験に使用している精製水を分析してみることをお勧めします。高感度分析であるほど,その必然性は 強まります。


 溶離液や標準試料の調製に使用している精製水が無機イオンにより汚染されていたのでは,何を測定しているのかわからなくなります。 また,インジェクターや試料び んが汚染されていることも想定に入れなければなりません。
 一連の測定の中で一度は実験に使用している精製水を注入してクロマトグラムを採取してみることを強く推奨します。試料や標準溶液を精 製水ではなく何らかの物質が溶けている水溶液で溶解・希釈している場合には,その溶液をブランクとして測定してみましょう。 その結果,目的 成分の溶出位置にピークが認められた場合は,精製水,インジェクター,試料びんなどを順番に疑ってみることになります。(参照:Q イオンクロマトに使用する水はどういったものが適切ですか?)
 

 
Q: 送液ポンプの圧力上限値はどのくらいの値に設定したらよいですか?(お問い合わせ番号IC0304)
A: 一般には,カラムの取扱説明書に記載されている耐圧上限値と同じに設定しておけばよいでしょう。


 分析に使用するカラムは,必要以上の圧力を加えると充填剤の充填状態が変化するためピーク形状が悪くなったり,ひどい場合にはピークトップが2つに割れたりします。  必ずカラムの取扱説明書を参照し,その耐圧上限値以内で使用するようにしてください。(参考:イオンクロマトグラフィーに用いるカラムの使用制限圧力

 送液ポンプは,一般に40 MPa程度の圧力負荷があっても送液できる能力を持っています。 カラムに対して必要以上の負荷圧がかかるのを防ぐため,必ず溶離液用の送液 ポンプの圧力上限値 (P. MAX) をカラムの耐圧上限値付近の値に設定してください。
 なお,送液ポンプに表示される圧力はインジェクターや検出器など,ポンプにつながるすべての圧力負荷の合計が表示されています。 カラム以外の流路にも負荷圧がか かっている場合には,P. MAXを「カラムの耐圧上限値+流路にかかっている負荷圧」に設定しても構いません。
 
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