アセトニトリル省溶媒対策に関するQ&A(メタノールへの変更)

 

Q: アセトニトリルをメタノールに置き換えるときの注意点について教えてください。(お問い合わせ番号0101)
A: 【分析条件について】
他の夾雑物との分離や溶出順序が変わる可能性がありますので,目的成分の保持時間だけでなく,他の成分との分離パターンにもご配慮ください。
(メタノールはプロトン性溶媒,アセトニトリルは非プロトン性溶媒です。 疎水相互作用と同時に,プロトン親和性が影響することがあります。 例えば-COOH基のようにプロトンを供与する官能基をもつ化合物については,水/アセトニトリル系ではアセトニトリル(CH3CN)のCNと引き合って溶出が早められていたのに水/メタノール系ではその相互作用が弱まり溶出が遅れるということがあります。 一方,芳香環に-NH2基がついている化合物については,水/メタノール系でメタノールの水素と-NH2基の窒素の孤立電子対が引き合うために,水/アセトニトリル系より溶出が早まるケースがあります。)
溶出が全体的に早すぎで,分離が悪いようならメタノールの比率を下げる, 逆に溶出が遅すぎる場合はメタノールの比率を上げて様子を見てください。
ご使用のカラムがメタノールをお使いいただくことが可能か,カラムの取説でご確認ください。

【カラムにかかる圧力について】
・メタノール使用時は,右図のように圧力がアセトニトリル使用時より上がります。例えば,水/アセトニトリル=6/4でお使いの条件をメタノールに移行して,水/メタノール=4/6で使うとすると圧力が1.5倍以上あがります。
 分析時の半分程度の流量で流し始め,カラムの使用可能最大圧力の範囲内で様子を見ながら流量を増やしてください。 グラジエント分析時は有機溶媒比率の増加と共に,圧力が上がる場合もあるので注意が必要です。 念のために,ポンプのP.Max(送液可能な最大圧力,送液圧がそれ以上になると送液を停止する)を設定しておかれるとよいと思います。

【UV検出について】
・低波長側での吸収が大きいため,検出波長によってはベースラインが安定しにくい,ノイズが大きくなる可能性があります。 高感度分析時にはご注意ください。

【液置換について】
・メタノール比率の高い溶媒を流す前は,塩の析出を防ぐためにまずメタノール/水を現在のアセトニトリル/水と同じ比率でカラム体積の5倍程度(150mm×4.6mmにカラムの場合,約12.5mL)流して頂き,その後メタノールの割合を増やしてください。有機溶媒比は同じ場合,アセトニトリル/水よりメタノール/水の方が塩の溶解力が高いので,同じ比率であれば通常析出しません。

 

Q: カラムの洗浄液(または移動相)をメタノールに変更しようと思いますが,具体的にはどの比率で行えば良いですか?またその時に,流速をどれくらいに設定すれば良いですか?(お問い合わせ番号0102)
A: ご使用のカラムがメタノールをお使いいただくことが可能か,カラムの取扱説明書でご確認ください。メタノール比率の高い溶媒を流す前は移動相(緩衝液など)中の塩の析出を防ぐために,まずメタノール/水を現在のアセトニトリル/水と同じ比率(例えば現在,10mMりん酸緩衝液/アセトニトリル=4/6なら,水/メタノール=4/6で流し始める)でカラム体積の5倍程度流して頂いてからメタノールの割合を増やしてください。 例えばアセトニトリルの割合が60%で分析していたなら,メタノールの割合を80%ぐらいでお試しください。 有機溶媒比が同じ場合は,アセトニトリル/水よりメタノール/水の方が塩の溶解力が高いので通常析出しません。
メタノール使用時は,圧力がアセトニトリル使用時より上がる可能性があります。分析時の半分程度の流量で流し始め,カラムの使用可能最大圧力の範囲内で様子を見ながら流量を増やしてください。 グラジエント分析時は有機溶媒比率の増加と共に,圧力が上がる場合もあるので注意が必要です。念のために,ポンプのP.Max(送液可能な最大圧力,送液圧がそれ以上になると送液を停止する)を設定しておかれるとよいと思います。

 

Q: アセトニトリルよりメタノールの方が溶出力が強いと書籍に書かれていましたが,そうでないケースもあるのですか?(お問い合わせ番号0103)
A: HPLC移動相では,有機溶媒は水との混合系で用いることが多いですが,溶出力は移動相中の有機溶媒の割合によります。
多くの場合は,メタノール/水系はアセトニトリル/水系より溶出力が小さいです。 アセトニトリル/水系での条件をメタノールに置き換える場合は,現在お使いの移動相のアセトニトリルの割合よりメタノールの割合を高く設定してください。(例えば,移動相のアセトニトリルの割合が50%場合は,メタノールの割合を80%するなど。)
一方,有機溶媒が100%かそれに極めて近い場合は,溶媒の性質(極性)が前面に出てくるようで,メタノールの方が溶出力が大きくなります。

 

Q: メタノールに置き換えた場合,感度はどれくらい変わるのでしょうか?検量線は新たに作成しなおさないといけないのですか?(お問い合わせ番号0104)
A: 移動相のアセトニトリルをメタノールに置き換えても,極端に感度が悪くなるということはありません。
但し,メタノールは下図のようにUV低波長側での吸収がアセトニトリルに比べて大きいため,検出波長によってはベースラインが安定しにくくなる,またはノイズが大きくなり高感度分析時に影響がでることがあります。 グラジエント分析では,ゴーストピークがアセトニトリル使用時より大きくなります。
また,LCMS分析ではイオン化効率に影響し感度が変わる場合があります。(化合物によっては,アセトニトリルよりメタノールの方がイオン化効率が高い場合もあります。) 検量線は,分析条件が大きく変わりますので新たに作成してください。


 

 

Q: メタノールに置き換えた場合,保持時間は変わるのでしょうか?また,現在のカラムを使うことは可能なのですか?(お問い合わせ番号0105 )
A: メタノール/水系は,アセトニトリル/水系より溶出力が小さい(有機溶媒比率が100%に極めて近い場合を除く)ため,同じ有機溶媒比率で置き換えた場合は保持時間が遅くなります。 メタノール比率を多めにして(例えば,移動相のアセトニトリルの割合が60%場合は,メタノールの割合を80%するなど。)お試し頂き,アセトニトリル/水系の時の保持時間と同等になるよう調整して頂く必要があります。 また,メタノールとアセトニトリルは分離の選択性が異なるので,化合物によっては溶出順序が変わることもありますのでご注意ください。

多くの場合,現在お使いのカラムでメタノールへ置き換えは可能と思われます。 特に,ODSカラムではメソッド開発時に,アセトニトリル/水系での分析を分離選択性を変えるためにメタノール/水系で試してみるということはよく行われます。メタノールでお使い頂く際は,下記にご注意ください。
ご使用のカラムがメタノールをお使いいただくことが可能か,カラムの取扱説明書でご確認ください。
メタノール使用時は,圧力がアセトニトリル使用時より上がる可能性があります。 分析時の半分程度の流量で流し始め,カラムの使用可能最大圧力の範囲内で様子を見ながら流量を増やしてください。念のために,ポンプのP.Max(送液可能な最大圧力,送液圧がそれ以上になると送液を停止する)を設定しておかれるとよいと思います。

 

Q: アセトニトリルをメタノールに変更すると,カラムにかかる圧力が高くなりますが,UV検出器のセルに影響はないのですか?(お問い合わせ番号0106)
A: HPLCの流路で一番圧力がかかるのはカラムです。 カラム出口以降は抵抗になるものがないのでほとんど圧がかかりません。 標準の検出器セルで問題なく,メタノール系移動相をお使いいただけます。

 

Q: 前処理の固相抽出にアセトニトリルを使っていますが,メタノールに置き換えても問題無いですか?(お問い合わせ番号0107)
A: 溶媒の性格が異なるため回収率に影響します。特に公定法で定められた手法の場合は,回収率に問題が無いことを検証しなくてはなりませんので,残念ながらお勧めできません。

 

Q: 逆相LCの移動相としてアセトニトリルの代わりに使用できる溶媒はメタノールだけですか?(お問い合わせ番号0108)
A: メタノール以外にエタノール,イソプロピルアルコール,アセトン,THFなどが考えられます。
 アセトンは溶媒自体のUV吸収が大きいため,UV検出時にはベースラインが安定しない可能性ががあります。示差屈折率(RID)検出には使えると思われますが,蒸発しやすい溶媒であるため安定性に影響がでるかもしれません。
 エタノール,イソプロピルアルコール,THF(テトラヒドロフラン)は粘性がアセトニトリルより大きく,カラムでの圧力が高くなりますのでご使用時は注意が必要です。

HPLC移動相としてよく使われるアセトニトリルが入手困難,流通不足,在庫不足と言われています。溶媒消費量削減するため対策ページです。