まずは,アセトニトリルの在庫管理を徹底する,移動相ボトルに使用者の名前,移動相組成/調製日を記載する(内容が不明で廃棄することになる移動相をなくす)ことが第一です。
それ以外にも日々の分析業務を見直してみると,以下のようなことにちょっと注意を払うことにより溶媒の無駄遣いを減らすことができます。
(1) カラムの洗浄をメタノールに変更する
(2) 分析前のコンディショニングや分析終了後のシャットダウンで消費される溶媒量を削減
(3) イソクラティック条件でも移動相2液を混合  (グラジエントシステムをお持ちの場合)

(1) カラムの洗浄をメタノールに変更する

 分析の移動相にアセトニトリルを使用しているから,カラムの洗浄にもアセトニトリルを使用しているということはないでしょうか?
分析に使用しているアセトニトリルをメタノールに変更するには分離パターンの変化を考慮する必要がありますが,多くの場合はメタノールでも洗浄可能です。 アセトニトリルよりメタノールの方が洗浄効果が高い場合もあります。 但し,メタノール/水系は,アセトニトリル/水系より圧力が高くなるので初めては少なめの流量(分析時の流量の半分程度)で圧力に気をつけながら送液してください。(メタノールをお使い頂く前に,カラム取扱説明書で使用可能かご確認ください。) また,メタノールの割合は,現在お使いの洗浄液のアセトニトリルの割合より高く設定してください。(例えば,洗浄液のアセトニトリルの割合が50%場合は,メタノールの割合を80%するなど。) 特に塩基性化合物が含まれる場合は,0.1%程度のりん酸水との混合系をお使いいただくと洗浄効果が上がります。 (参考:ODSカラムの洗浄方法)
また分析終了時カラムを外した後に,流路の洗浄や長期保管を目的に,流路を移動相と別の溶媒で置き換える場合がありますが,同様にアセトニトリルをメタノールに変更してお使い頂けます。

(2) 分析前のコンディショニングや分析終了後のシャットダウンで消費される溶媒量を削減

分析前にベースラインが安定するまで移動相を送液するコンディショニングや,分析後カラムの温度が下がるまで送液するシャットダウン時に,しばらく装置のそばを離れて必要以上に流しすぎてしまうということはないでしょうか?
LCワークステーション(LCsolutionなど)やシステムコントローラによる自動化機能で,ある一定時間経過後分析を開始したりポンプの送液と止めるといったことが可能です。


 【参考】  LCsolution ベースラインチェック機能/シャットダウン機能


このような便利機能を使って,実際の測定を行っていないときの無駄な移動相消費量を抑えることができます 。

(3) イソクラティック条件でもグラジエントシステムで移動相2液を混合

 イソクラティック分析は,水系と有機溶媒系の溶媒を予め混合して使用することが一般的ですが,分析終了後に混合した溶媒が余って無駄になったということはないでしょうか?
イソクラティック分析であっても,高圧グラジエントと同じように2台の送液ユニットを利用して混合する,もしくは低圧グラジエントユニットを用いて混合することで可能です。
 イソクラティック分析では,分析中に移動相がなくなることを防ぐために多めに用意するので,最終的には余剰分を廃棄することになります(短い期間なら保存できますが,蒸発により組成が変化する恐れがあります)。 また,分析条件を検討していて引き続き別の分析条件を試す場合に,予め混合しているとその使いかけの移動相は廃棄することになり,無駄な溶媒消費につながります。
 グラジエントシステムでは有機溶媒を独立した移動相ボトルから供給することにより,異なる移動相条件においても有機溶媒は再利用できます。微妙な分離を要求される分析では,予め混合した移動相を用いる場合との分離を比較検討する必要はありますが,大半のケースでは分析条件の大幅な変更などは必要なく,省溶媒を実現することができます。

入手困難,流通不足,在庫不足と言われているアセトニトリルの省溶媒対策ページです。