ヘリウムガスの消費量削減に対する取り組みとご提案

ランニングコストの低減や環境負荷への配慮に対する関心は高まっています。ヘリウムガス(He)は貴重な資源であり,少ない使用量で大切に利用することが求められています。ここでは,ヘリウムガス消費量を低減させる機能のご紹介と他のキャリアガスへの変更についての注意点をご説明します。

分析中に消費されるキャリアガスを節約する(キャリアガスセーブモード)

目的試料の濃度が高い場合,カラムへの導入量を減らす目的でスプリット比を大きくして分析を行いますが,一般的にGC/MS分析では,試料を注入直後に気化してキャリアガスで運ばれるため,分析時間中に大きなスプリット比のままにしておく必要がありません。 
試料注入の後,指定した時間にスプリット比を変更するキャリアガスセーブモードを使用してヘリウムガスの消費を抑制する方法を紹介します。キャリアガスセーブモードは,GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2020/QP2010シリーズ全機種に標準で搭載されています。

連続分析でのキャリアガスセーブモード使用例

キャリアガスセーブモードにより,試料導入後1minでスプリット流量を50mLから5mLに減らしています。 オートインジェクタと併用することにより,分析終了後,翌日分析を開始するまで,スプリット流量をセーブした状態を維持することができます。
1分析当たりのヘリウム消費量を比較すると,下記条件の場合,約78%の消費量削減効果が得られます。
分析時間:30分,スプリット比:50
キャリアガスセーブ機能:1分後にスプリット比5
カラム温度:170℃,カラム:内径0.25mm 長さ30m 膜厚0.25μm

設定方法のご紹介: キャリアガスセーブモードを使用して分析中にスプリット比を変更するには
 

分析待機中や分析終了後に消費されるキャリアガスを節約する (エコロジーモード&シャットダウンメソッド)

分析終了後もヘリウムガスは消費されています。エコロジーモード,シャットダウンメソッドを使用すると,この量を低減することができます。

使用している機種が,
GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2020シリーズ,GCMS-QP2010 Ultra/SE の場合 → 1. エコロジーモード
GCMS-QP2010 Plus,PARVUM2(GCMS-QP2010S),GCMS-QP2010 の場合 → 2. シャットダウンメソッド

使用している装置の機種名がわからない場合  → 機種名の確認方法

1. エコロジーモード(GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2020シリーズ,GCMS-QP2010 Ultra/SE)

GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2020シリーズ,GCMS-QP2010 Ultra/SE では,分析待機時の不要なガスと電力を節減するエコロジーモードを標準で搭載しています。エコロジーモードにより,分析待機中や連続分析終了後のヘリウムガス消費量を抑えることができます。

設定方法のご紹介: 手動でエコロジーモードに入るには, バッチ終了後に自動的にエコロジーモードに入るには

2. シャットダウンメソッド(GCMS-QP2010 Plus,PARVUM2(GCMS-QP2010S),GCMS-QP2010)

GCMS-QP2010 Plus,PARVUM2(GCMS-QP2010S),GCMS-QP2010には,エコロジーモードが搭載されていませんが,シャットダウンメソッドを設定することによって,エコロジーモードとほぼ同様にヘリウムガスの消費量を削減することができます。

設定方法のご紹介: 分析終了後に装置温度やキャリアガス流量を変更したい(シャットダウンメソッド)
 

ECOシミュレーションで低減量を試算

ヘリウムガスの節約量は,現在のお客様の使用環境(分析条件)によって異なりますが,ECOシミュレーションで「エコロジーモード」効果を試算できます。このECOシミュレーションでは,お客様のラボ稼動状況に応じたエコロジーモードの効果を具体的に確認していただけます。

キャリアガスを水素に変更する

GCMS分析で用いられるキャリアガスは,通常ヘリウムです。しかし,目的によっては使用できないこともありますが,水素もキャリアガスとして使用できます。島津のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は,水素キャリアガスに対応しており,水素をGCのキャリアガスとして利用できます。水素ガス(H2)は,ヘリウムガスと比較して入手しやすく,安価であり,線速度に対する分離性能も維持できます。安全面に留意して使用すれば,ランニングコストも大幅に削減することができます。

キャリアガスの種類を変更すると同一条件でも同じ結果が得られるとは限りませんので,分析条件の検討が必要になることがあります。
GCMSの前処理装置にはキャリアガス以外のガスも使用されており,装置の種類によっては,キャリアガスに水素が使用できない場合もあります。水素キャリアガスを使用できる前処理装置に関しては,弊社担当営業までお問い合わせください。

GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2020シリーズ,GCMS-QP2010シリーズには,キャリアガス自動停止機能が搭載されています。キャリアガス流量制御に電子式フローコントローラ(AFC)が採用されており,カラム入口圧,全流量が一定条件内で設定値に達さない場合には,大量のキャリアガス漏れなどのトラブルが起こっていると判断して,キャリアガス供給を停止し,GCも自動停止します。
また,真空ポンプが故障により停止した場合は,キャリアガス供給が自動停止されます。

水素をキャリアガスとして利用する際の特長をまとめました。また,GCMS-TQシリーズ,GCMS-QP2010シリーズについては,使用に関する検証を行いましたので,その内容をご紹介させていただきます。

  • 注入口の圧力と流量を監視しており,一定時間内に設定値にならなければオーブンの温度を下げたのち,キャリアガスの供給を停止します。
  • キャリアガスの制御異常が発生した場合には,電子フローコントローラーがキャリアガスの供給を自動的に停止します。
  • 真空ポンプが故障により停止した場合には,キャリアガス供給を自動で停止します。
  • 島津のGCMSではオーブン内での水素漏えい実験を行っており,オーブン内に水素が滞留しない構造となっていることを確認しております。水素の拡散係数が大きいため,オーブン内に水素は留まりません。
  • 島津GCMSでは水素を使用した爆発実験を行っております。通常の使用条件での水素ガス漏れでは,カラムオーブン内で意図的に点火させても軽い爆発音がしますが,その他は何も起こりません。 また,真空起動後,MS部前扉のノブを完全にゆるめていただくことにより,通常の使用条件では,水素がMS分析内部に滞留することはありません。
  • 島津ワークステーションソフトウェア GCMSsolution では,水素キャリアの設定が標準で行えるようになっており,キャリアガス線速度一定モードで同一の線速度の条件に設定いただくことで,簡易にメソッド移行検討が行えます。

以下の事項は水素ガスを使用する際に必ず実行してください。

 

一般強制 電子フローコントローラー APC・AFCでガスの供給圧が正常であるにもかかわらずリークエラーが発生するときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。
漏れが見つからない,漏れが止まらない,または漏れを止めても正常に戻らないときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。
一般強制 真空起動後は,MS部前扉のノブを完全にゆるめてください。

安全な水素供給源 水素ガス発生装置の使用をお勧めします

GCMSのキャリアガス用には高純度水素発生器(水分濃度 1ppm以下)を使用し,水分トラップフィルタを取り付けて使用してください。

水素キャリアガスを安全に使用していただくために(取扱上の注意)

水素ガスは,爆発しやすい危険なガスです。 ガスクロマトグラフ質量分析計で水素キャリアガスを使用するときに,想定される危険および安全に使用していただくための留意点を安全マニュアルとしてまとめました。
→ GCMS-QP2010シリーズ,GCMS-QP2020,GCMS-TQ8030/8040 水素キャリアガスの安全使用について(PDF,324KB)

分析への影響に関する留意点

感度(S/N)に関してはノイズが増加します。各装置での水素キャリア使用時のS/N仕様に関しては,仕様書をご確認ください。分離に関しては,最適なカラムを使用およびメソッドを作成することにより,同等の結果を得ることができます。大部分の化合物は分析可能ですが,水素は不活性ガスではありませんので,注入口で分解する場合もあります。

前処理装置が接続されていると,キャリアガスセーブモード,エコロジーモードおよびシャットダウンメソッドの各機能を使用できない場合があります。前処理装置が接続されているGC-MSをご使用中のお客様は,弊社担当営業までお問い合わせください。
キャリアガスに水素ガスの利用をご希望される場合は,弊社担当営業までお問合せください。

Top of This Page