顕微鏡アクセサリの使い方

FTIRノウハウ・実務編

FTIR TALK LETTER vol.4(2005)
前回の 「顕微鏡測定のためのサンプリングアクセサリの紹介」では,赤外顕微鏡測定でサンプリングをうまく行うために使われる道具や最低限必要なもの,あれば便利なものなどの紹介を行いました。今回は質のよいスペクトルを得るために赤外顕微鏡のアクセサリの使い方についてご紹介します。

赤外顕微鏡 透過測定

赤外顕微鏡において透過測定を行う場合,透過測定用窓板を利用してサンプルの圧延やサンプルの測定を行います。透過測定用窓板としては,KBr,BaF2,ダイヤモンド窓板,シリコンウェハなど いくつか材料で作成された窓板が知られています。 これらはそれぞれ特長があり実際の測定の際に使い分けられています。

1.KBr
特長・・・・・よく用いられます。 安価で,赤外光の透過度も90%と非常に高いです(図1)。波数領域も4000〜400cm-1と広いため良好なスペクトルが得られます。
注意点・・・・・比較的やわらかく傷がつきやすい性質です。水分を含んだサンプルでは KBrが溶解してしまうので測定に不向きです。 また保存は湿度50%以下で行ってください。湿度の高いところで保存すると,潮解性のために KBrの窓板が曇り,良好なスペクトルは得られなくなります。

2.BaF2
特長・・・・・よく用いられます。安価で,赤外光の透過度も90%と非常に高いです。KBrと比較して耐水性に優れています。
注意点・・・・・比較的やわらかく傷がつきやすい性質です。800cm-1より低波数側に BaF2の吸収があり,720cm-1前後までしか測定できません(図1)。酸とアンモニアを含んだサンプルでは BaF2が溶解してしまいます。

各種窓板材料の透過率
図 1. 各種窓板材料の透過率

3.ダイヤモンド
特長・・・・・取り扱いが簡単でよく用いられます。最も硬い物質で非常に傷がつきにくいのも利点です。また化学的にも比較的安定でいろいろなサンプルに対応可能です。赤外光の透過率は70%前後と良好です。
注意点・・・・・KBr,BaF2などと比べて高価です。測定可能な部分が小さく,比較的大きなサンプルの場合は切断してサンプルをセットしなければならないことがあります。また窓板の端の部分は測定には適しません。 2000cm-1付近にダイヤモンドの吸収があるため,2000cm-1付近でのS/Nが低下します(図1)。また屈折率が 2.4と比較的高く,一般的なサンプルとの屈折率差があり干渉縞が出やすくなります。

4.シリコンウェハ (高抵抗タイプシリコンウエハ)
特長・・・・・比較的硬く取り扱いは容易です。また洗浄に水が使えます。(あまり用いられていません)
注意点・・・・・赤外光の透過率が55%と比較的低く良好なスペクトルは得にくいです。可視光による透過観察ができないという欠点もあります。また屈折率が3.4と高くサンプルとの屈折率差が大きく干渉縞が出やすくなります。

以上の特長から,赤外顕微鏡透過測定用の窓板としては,汎用的な試料や硬い試料にはダイヤモンドが適しています。また,高感度分析にはKBrやBaF2が適しています。

ダイヤモンドセルの使い方 (サンプルを圧延する場合の注意点)

ダイヤモンドセルは2〜3mmのダイヤモンドの窓板が埋め込まれたディスクが2枚セットになったものです(図2,図3)。硬いサンプルや不定形なサンプルを薄くするのに便利なものです。だたし使い方によってはなかなか良好なスペクトルが得られません。そこでダイヤモンドセルの使い方をご紹介します。
サンプルを適量ディスクの上にのせます。この際ダイヤモンドセル全体に広がるほどサンプルをのせますと,バックグラウンド測定を行えませんので注意してください。
上からもう一枚のディスクをのせサンプルを圧延します。
柔らかい試料は手回しネジを使わず手で押すだけでもかまいません。小さくて硬い試料は手回しネジで強く圧延する際に,まれにダイヤモンドの端にひびが入ることがありますので気をつけてください。

上側のディスクをつけて測定すると,1)赤外光が2枚窓板を透過し透過率が悪くなる,2)ダイヤモンドの吸収が大きくS/Nが悪くなる,3)ディスク間が平行になりやすく干渉縞が非常に出やすくなる,など良好なスペクトルが得られにくくなります。
そこで上側のディスクを取り外します。この際サンプルが上側のディスクについている場合もありますので注意してください。
サンプルがついている側のディスクをホルダにのせて赤外顕微鏡透過測定を行います(図4)。

使用後は窓板の洗浄を行います。洗浄はアセトンなどを少量含ませた綿棒を用いてこすり落とすのが簡単です。

ダイヤモンドセル(サンプル圧延時)
図 2 ダイヤモンドセル
2枚のディスクでサンプルを圧延する
ダイヤモンドセル構造
図 3 ダイヤモンドセル構造
図2のA-B部分 断面模式図
ダイヤモンドセル(サンプル測定時)
図 4 ダイヤモンドセル
サンプルがついているディスク
をホルダに載せて測定を行う




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