天びんの誤差要因-緯度

移転等で電子天びんの設置場所を変更した場合には、その場所で再度正しい分銅を載せ、調整(キャリブレーション)し直す必要があります。わずかな違いだろうと思いがちですが、精密に質量測定をする場合は決して無視できない誤差となります。
「天びんの誤差要因について」シリーズの初回は場所による重力の違いについて説明します。

●電子天びんは重力計

同じものをどこへ持っていっても質量はかわりません。60kgの質量は東京でも大阪でも60kgです。月面でも60Kgです。ところが、体重60kgの人が月へ行き、地球で使っていたヘルスメータをそのまま使って体重をはかったとします。するとそのヘルスメータの表示は約10kgを示します。なぜでしょうか?
これは月面での重力は地球上の約1/6しかなく、ヘルスメータは原理的には質量計でなく、重力計だからです。ヘルスメータは物体にはたらいている重力の大きさをもとに質量を表示しています。
電子天びんも基本原理はヘルスメータと同じ重力計です。だから電子天びんも重力が異なる別の場所に移動した際にはその場所でキャリブレーションが必要になります。

 

●実際の誤差はどれ位か?

同じ日本の中でも緯度の違いにより各地で以下の通り重力が異なります。日本の北と南では約1/800の違いがあります。電子天びんを札幌から鹿児島へ移動した場合、仮にその電子天びんが数万分の1の分解能を持つものだったとしても、キャリブレーションしていない場合は、1/800程度以下の精度しか確保できていないことになります。

日本各地の重力の違い

場所 重力加速度(m/s2
札幌 9.805
仙台 9.801
東京 9.798
大阪 9.797
鹿児島 9.795

”場所を移動したときにはキャリブレーション”
これは精密な質量測定のための常識です。その点、校正内蔵形の天びんは非常にラクです。

●場所(緯度)により重力が異なるわけ

地球はご存知の通り自転しています。回転しているものには遠心力がはたらきます。遠心力は回転の中心軸(地球の場合は北極と南極を結ぶ線)から距離が遠くなるにつれて大きくなります。

遠心力は地球の引力を打ち消す方向にはたらくので、遠心力が大きくはたらいているところほど、差し引き地球に引っ張られる力が小さくなります。そのため、重力は北極と南極が最大で、赤道上が最小になります。

図解