TSCA PBT5物質規制 PIP(3:1)の分析

TSCA PBT5物質規制

フェノール、イソプロピルリン酸(3:1)(PIP(3:1))(CAS登録番号:68937-41-7)は、イソプロピル化された3つのフェニル基を持つリン酸化合物です。可塑性や難燃性を付与する目的でポリ塩化ビニル(PVC)やポリウレタンなどの樹脂材料に使用されています。他にも耐摩耗性や耐圧縮性を付与することもでき、油圧作動油や潤滑油、コーティング剤、接着剤、シール剤といった様々な材料に使用されています。2021年、米国環境保護庁(U.S. EPA)は、有害物質規制法(TSCA)の第6条h項に基づき、PIP(3:1)を難分解性・生物蓄積性・有毒性のすべてに該当する化学物質(PBT物質)の一つに位置付け、当該物質を含有する製品や成形品の国内での製造や商取引の規制を開始しました(表1)。米国へ製品を輸出する場合、PIP(3:1)が含有されていないことを確認する必要があります。
しかし、サプライチェーンのグローバル化・複雑化により、PIP(3:1)の使用の有無を情報伝達だけで把握することが困難になっています。

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フェノール、イソプロピルリン酸

 

表1 PIP(3:1)の規制概要 
対象 規制される活動 許容濃度 規制開始時期
PIP(3:1) 含有製品または成形品 加工および商取引 なし
2022年
3月8日
接着剤またはシール剤 加工および商取引 なし
2025年
1月6日
写真印刷用品 加工および商取引 なし
2022年
1月1日
備考) 規制の解釈は当社が独自に行ったものです。規制の最新動向や適用除外項目などの詳細は、U.S. EPAのWebサイト(https://www.epa.gov/)からご確認ください。 

TSCA PBT5物質規制に関する分析事例

熱分解GC-MSによるPIP(3:1)の分析

熱分解GC-MSによるPIP(3:1)の分析

リン酸化合物は、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤などプラスチックの添加剤として広く用いられているため、スクリーニングにはPIP(3:1)に対して選択性を持った熱分解(熱脱着)-GC-MS(Py/TD-GC-MS)のような分析手法が有効です。熱分解(熱脱着)-GC-MS(Py/TD-GC-MS)は、国際規格IEC 62321-8にも採用されており、溶媒抽出GC/MS法のような多量の有機溶媒が不要であるため、環境や分析オペレーターに優しい装置として注目されています。ここでは、Py/TD-GC-MSによる樹脂中PIP(3:1)の分析についてご紹介します。

 
標準試料(1000 mg/kg)のSIMクロマトグラム

図 1 標準試料(1000 mg/kg)のSIMクロマトグラム

PIP(3:1)の標準溶液は、PIP(3:1)標準物質(Chiron AS、P/N 8777.27)をアセトンで希釈して調製しました。次に、PIP(3:1)の樹脂中濃度が1,000 mg/kgになるようにサンプルカップに適量のPIP(3:1)標準溶液とPVC溶液を加え、室温で乾燥させた後、Py/TD-GC-MSで測定しました。図1は、3つのイソプロピル基を持つ分子量452のPIP(3:1)のSIMクロマトグラムです。

 
実試料の分析 
 

PIP(3:1)が使用されている成形品を測定したところ、いずれの試料からも標準溶液と同じ保持時間にPIP(3:1)由来のピークが検出されました(PVC製キャップ:図4、ポリウレタン製スポンジ:図5)。 ポリウレタン製スポンジの測定で得られたScanスペクトルを高分子添加剤ライブラリに照合したところ、スポンジ試料にリン系難燃剤の一種であるリン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)(TDCPP)が使用されていることがわかりました(スペクトルの類似度:95)。

PIP(3:1)が使用されている成形品を測定

 
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