RoHS規制:対象装置紹介

島津製作所は、RoHS/ELV指令の検査装置において業界内で高いシェアを誇るエネルギー分散型蛍光X線装置(EDXRF)のほか、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)/ICP質量分析装置(ICP-MS)、原子吸光分光光度計(AA)、紫外可視分光光度計(UV-VIS)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、ガスクロマログラフ質量分析計(GC-MS)、液体クロマトグラフ分析計(HPLC)、イオンクロマトグラフ分析計(IC)を自社で開発・製造し、アプリケーション開発・検査方法の指導まで、お客様のRoHS/ELV対応体制構築をサポートいたします。

有害物質 Cd、Pb、Hg、Cr、(Br) 精密定量分析

ICP発光分析装置 ICP/原子吸光分光光度計 AAは、試料を溶解するだけで、試料の種類・履歴に関係なく、有害金属を高感度に測定することができます。意図的に添加された有害金属だけでなく、物質に不純物として含まれる有害金属の測定も簡単に行うことができます。さらに、ICP発光分析装置・ICP質量分析装置は複数の有害物質を一斉分析することができます。

ICP/AAの分析対象

  • 金属(鉄鋼、非鉄)
  • 生体、医薬品、食品
  • その他 様々な試料中金属の分析が行える
  • 化学、薬品、石油、樹脂、セラミックス
  • 環境(水道、環境水、排水、土壌、大気粉塵)
  • ※ 固体試料は前処理(溶液化)が必要です

ICP/AA法の比較

フレームAAS ファーネスAAS ICP-AES ICP-MS
感度
ダイナミックレンジ
ppb~ppm
2桁
ppt~ppb
2桁
ppb~%
5桁
ppt~ppm
5桁
精度
分光干渉
化学干渉
物理干渉








分析速度
多元素一斉分析

不可

不可


操作性
メンテナンス




原子吸光法とは

液体試料をネブライザで吸い上げ、バーナ中に噴霧して加熱、原子化します。そこにホロカソードランプを用いて測定元素固有の波長の光を照射すると光は原子に吸収されます。この吸収を測定して、元素の定量分析を行います。

ICP発光分析法・ICP-MS法とは

高周波を用いてアルゴンガスを電離状態にして高温のプラズマを発生させます。液体試料をネブライザで吸い上げ、霧状にしてそのプラズマ内に導入すると、試料中の原子が励起されます。励起原子から発生する元素特有の光を分光するのがICP発光分析法、イオン化された原子を真空内に取り込み質量分析を行うのがICP質量分析法です。

各分析法の特長

原子吸光分析法 ICP発光分析法 ICP質量分析法
  • ・高感度(ppb~)
  • ・低価格
  • ・手軽に使用できる
  • ・コンパクト
  • ・高感度(ppb~)
  • ・ダイナミックレンジが広い(ppb~%)
  • ・定性分析、同時多元素定量が可能
  • ・溶液分析で検量線試料の作成が容易
  • ・超高感度(ppt~)
  • ・ダイナミックレンジが広い(ppt~ppm)
  • ・定性分析、同時多元素定量が可能
  • ・溶液分析で検量線試料の作成が容易
  • ・同位体比測定が可能

主な前処理法

希釈法 試料を純水や希酸、有機溶剤にて希釈する。
例)均一な試料。めっき液、食品(乳製品など)、医薬品、生体試料(血液、尿など)。
乾式分解法 試料を高温(400~550℃)で加熱。短時間(数時間)分解、操作が簡便。有機物の分解に適用。
低沸点元素Hg、As、Se、Te、Sbなどが揮散する可能性あり。
湿式分解法
(標準的な処理法)
試料+酸で低温(~300℃)加熱。有機物の分解に長時間(数時間~数日)を要する。
容器、雰囲気など操作環境や酸からの汚染に注意。
高圧分解法
マイクロウェーブ高圧分解法
試料+酸をフッ素樹脂製密閉容器、百数十℃で加熱、高圧下で分解。密閉系分解、低沸点元素の揮散が少ない、
分解時間が早い操作環境、試薬からの汚染が少ない、使用酸の量が少ない。
例)低質、土壌、粉塵、セラミックス、生体、食品、など。
アルカリ融解法 試料+アルカリ融剤、高温(1000℃)で加熱、融解する。難溶解の金属化合物、セラミックスなど。
高塩試料となるため、干渉、汚染に注意。

有害物質 六価クロム(Cr6+) 六価クロム選択的分析

分光光度計 UV-1280に水質プログラム(オプションソフトウェア)を取り付け、これらとパック化された専用試薬を使用することで、ジフェニルカルバジド吸光光度法によるCr6+の定量が簡単に行えます。

水質測定システム(六価クロム分析システム)

ジフェニルカルバジド吸光光度法によるCr6+分析

ジフェニルカルバジドはCr3+と反応せず、Cr6+のみと反応して錯体を形成し、540nm付近にピークを持つ吸収曲線を示します。このピークを用いれば、紫外可視分光光度計でCr6+を選択的に定量することができます注1)
注1)V5+、Fe3+、MO6+もジフェニルカルバジドと反応するために、これらが共存すると正の誤差を生じます。

ジフェニルカルバジド吸光光度法によるCr6+の抽出法と測定手順の例

  • 01試料を純水の入った容器に入れ5分間沸騰させ、クロメート被膜中のCr6+を抽出する。
  • 02抽出溶液の一部をミクロセルに入れ、ブランクを測定する。
  • 03試料1.5mLを専用容器に取り、(株)共立理化学研究製WAK-Cr6+用試薬チューブに吸わせる。測定開始キーを押した後、チューブを5~6回振る。
  • 04約2分後、ブランク測定で使用したミクロセル内の溶液を捨て、チューブ内の発色した試料をミクロセルに入れてセットする。
  • 05指定時間後にCr6+濃度が自動的に表示される。

※本分析法は、一例です。IEC:62321には準拠しておりません

※ネジなどに含まれるCr6+を定量する場合、沸騰水などの熱水による抽出が必要となりますが、クロメート被膜に含まれるCr6+全量が抽出されるわけではありません。したがって、ジフェニルカルバジド吸光光度法で得られた濃度は試料に含まれるCr6+全量を示すとは限りません。

UV水質測定システム

パック化された専用試薬((株)共立理化学研究所製)と組み合わせて簡単にCr6+の定量分析が行えます。

(株)共立理化学研究所製試薬用のCr6+の検量線が水質プログラムに内蔵されています。検体測定時に測定者が検量線を作成する必要はありません。

画面の指示どおりに操作すればCr6+の濃度が自動的に表示され、ブザーが測定終了をお知らせします。

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UV水質測定システム

有害物質 臭素系難燃剤 スクリーニング分析

フーリエ変換赤外分光光度計 FTIRに1回反射形ATR付属装置を取り付け、臭素系難燃剤判別プログラム*を使用することにより、数十秒でプラスチックと臭素系難燃剤の判定が行えます。臭素系難燃剤のスクリーニング分析に適しています。

臭素系難燃剤判別プログラム

プラスチックの種別とPBDEの含有の有無を判定します。画面の指示にしたがって操作すると、判定結果が表示され、ファイル名や試料名など測定前に入力した情報と判定結果がCSVファイルに自動記録されます。

測定方法

デュラサンプラー2

試料をデュラサンプラーII(1回反射形ATR)に載せ、付属の圧縮棒で押し付けてダイヤモンドプリズムと密着させます。

赤外光はダイヤモンドプリズムの部分で全反射すると共に試料内に浸透します。

試料に吸収があれば全反射した赤外光が減衰し、赤外スペクトルが得られます。

試料を直接あるいはナイフ等で一部を切断して圧縮棒で押し付けるだけで赤外スペクトル測定が行えます。

なぜFTIRで臭素系難燃剤の分析が可能なのか

ppmオーダーの難燃剤がプラスチックに含まれていても難燃剤としての効果を発揮しないために、難燃効果をもたらすためには通常5~10重量%程度の難燃剤がプラスチックに含まれています。難燃剤のピークは主剤のプラスチックのピークと重なることが多いためにppmオーダーの場合には難燃剤のピークを赤外スペクトル上で確認することはできませんが、5~10重量%程度の難燃剤が含まれていれば難燃剤のピークが確認でき、FTIRでスクリーニング分析が行えます。

FTIRとは

光源から照射された赤外光は干渉計に到達します。干渉計はビームスプリッタ、固定鏡、移動鏡で構成され、ビームスプリッタによって反射された赤外光は固定鏡へ、また透過した赤外光は移動鏡へ到達し、それぞれで反射された後、再度ビームスプリッタに到達し干渉光(インターフェログラム)が生成されます。干渉光は試料を透過または反射して検出器で受光されます。この干渉光をフーリエ変換することによって赤外スペクトルが得られます。
FTIRの特長として、測定が短時間で行えること、前処理が容易なことなどが上げられます。

有害物質 全臭素 スクリーニング分析

燃焼イオンクロマトグラフは、全臭素のスクリーニング分析に用いることができます。
試料を燃焼装置で完全燃焼させることで、Brなどのハロゲンをガス化して吸収液に捕集し、臭化物イオン等として分離・検出します。試料の燃焼方法としては、石英管燃焼法を使用します。

燃焼管方式-イオンクロマト法によるスクリーニング分析の特長

イオンクロマトグラフに燃焼前処理を組み合わせることで、樹脂等の非水溶性試料中の臭化物イオンを含むハロゲンを分析することが可能となります。

臭素系難燃剤のように難燃性材料の場合には、長時間・高温で燃焼処理可能な管状炉方式の燃焼装置が有効です。

燃焼試料は比較的微量なため、サンプリングが重要となります。

燃焼イオンクロマトグラフとは

イオンクロマトグラフの前処理装置として燃焼装置を組み合わせたものが、燃焼イオンクロマトグラフです。試料を高温で燃焼させ、発生したガスを吸収液に捕集し、生成したイオンをイオンクロマトグラフで分離・定量します。ポリマーなど樹脂中に含まれるハロゲンを微量まで定量できます。

有害物質 臭素系難燃剤

GC-MS多機能熱分解システム

ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-QP2020 NX は、RoHS指令(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する指令)で規制対象となっている臭素系難燃剤PBB(ポリ臭化ビフェニル)とPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)を測定することができます。
その前処理には、ソックスレー抽出法または溶解性のポリマーは溶媒溶解法が用いられます。
これらの前処理法は厳密な定量結果を得るには必須ですが、多くの検体を分析するには適していません。これらの処理は操作が煩雑であり、処理に時間がかかり、また、大量の有機溶媒を使用するといった問題があります。
熱分解‐GC/MS(Py-GC/MS)は、簡便にこれらの臭素系難燃剤をスクリーニングすることができます。

測定手順:ソックスレー抽出‐GC/MS法

  • 01ポリマーを粉砕。
  • 02ソックスレー抽出器を洗浄するための前抽出
    (70mL トルエン・2時間)。
  • 03粉砕したポリマー100mg秤量。
  • 04サロゲート添加後、ソックスレー抽出(60mL・2時間以上)。
  • 05抽出後、100mLにメスアップ。
  • 06内部標準物質の添加。
  • 07GC/MSで測定。

測定手順:溶媒溶解法(溶解するポリマー(PS-HIまたはHIPS))

  • 01ポリマーを粉砕し、100mg秤量。
  • 02ポリマーが可溶な溶解溶媒を9.8mL添加。
  • 03サロゲートを200µL添加後、超音波で溶解(30分)。
  • 04溶液を1.0mL分取。
  • 05ポリマーが不溶でPBDEおよびPBBが可溶な溶媒9.0mL添加。
  • 06沈殿したポリマーを濾過。
  • 07内部標準物質の添加。
  • 07GC/MSで測定。

測定手順:Py-GC/MS法

  • 01カッター等でポリマーを細かく切り刻む。
  • 02ポリマー片をPyのサンプルカップに秤量。
  • 03サンプルカップをPy-GC/MSのオートショットサンプラーにセット。
  • 04Py-GC/MS測定。

GC-MSとは

ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC-MS)は、GCで分離された化合物を、MSでイオン化してそのイオンの質量/電荷数(m/z)で分離する複合分析装置です。

GCとは

サンプルをGCの注入口で加熱・気化し、ヘリウムガスでGCのカラムに導入します。カラムの内壁には液相が付いており、導入された成分は、液相への溶解と気相(ヘリウムガス)への移行を繰り返しながらカラム内をヘリウムガスとともに移動します。液相に留まる時間が成分によって異なるため、カラムから出てくる時間(保持時間)が成分ごとに異なり分離されます。

MSとは

カラムで分離された成分はMSに導入されます。MS内部では、まずイオン源内でフィラメントからの加速された電子がカラムから出てきた化合物分子から電子を取り除きます。その結果、分子は電子を一個失って正の電荷を持ったイオンになるとともに開裂して正の電荷を持った破片(フラグメントイオン)を生じます(電子イオン化)。このようにして生成したイオンは高周波電圧を印加された四重極(Quadrupole QP)に送り込まれ、印加する高周波電圧を走査することによって、m/zごとにイオンを分離し検出します。
実際の測定では、目的とする成分に特徴的なイオンのm/zをモニターすることによって得られるマスクロマトグラムを用いて定量分析をします。

熱分解

熱分解は、ポリマー試料を高温に保った熱分解炉に落下し、ポリマーを熱分解し、その生成物をGC-MSに導入するための装置です。炉の温度を、ポリマーの熱分解温度より低い温度に設定すると、ポリマーを分解することなくポリマー中のPBB、PBDE、フタル酸エステル類などを熱抽出することもできます(熱脱着法)。

有害物質 フタル酸エステル類

GC-MS多機能熱分解システム

ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-QP2020 NX は、RoHS指令(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する指令)で規制物質として追加された4種類のフタル酸エステル類(フタル酸ジ-2エチル ヘキシル (DEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソブチル (DIBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP))を測定することができます。その前処理には、ソックスレー抽出法または溶解性のポリマーは溶媒溶解法が用いられます。
熱分解‐GC/MS(Py-GC/MS)は、簡便にこれらのフタル酸エステル類をスクリーニングすることができます。

測定手順:ソックスレー抽出‐GC/MS法

  • 01ポリマーを粉砕。
  • 02ソックスレー抽出器を洗浄するための前抽出
    (70mL n-ヘキサン・2時間)。
  • 03粉砕したポリマー500mg秤量。
  • 04サロゲート添加後、ソックスレー抽出
    (120mL n-ヘキサン・6時間以上)。
  • 05抽出後、ロータリーエバポレータで10mLにし、
    n-ヘキサンで50mLにメスアップ。
  • 06内部標準物質の添加。
  • 07GC/MSで測定。

測定手順:溶媒溶解法(テトラヒドロフランに溶解するポリマー)

  • 01ポリマーを粉砕し、300mg秤量。
  • 02溶解溶媒テトラヒドロフランを10mL添加。
  • 03サロゲート添加後、超音波で溶解 (30分から1時間)。
  • 0420mLアセトニトリルを滴下。
  • 0530分静置し濾過。
  • 06内部標準物質の添加。
  • 07GC/MSで測定。

測定手順:Py-GC/MS法

  • 01カッター等でポリマーを細かく切り刻む。
  • 02ポリマー片をPyのサンプルカップに秤量。
  • 03サンプルカップをPy-GC/MSのオートショットサンプラーにセット。
  • 04Py-GC/MS測定。

GC-MSとは

ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC-MS)は、GCで分離された化合物を、MSでイオン化してそのイオンの質量/電荷数(m/z)で分離する複合分析装置です。

GCとは

サンプルをGCの注入口で加熱・気化し、ヘリウムガスでGCのカラムに導入します。カラムの内壁には液相が付いており、導入された成分は、液相への溶解と気相(ヘリウムガス)への移行を繰り返しながらカラム内をヘリウムガスとともに移動します。液相に留まる時間が成分によって異なるため、カラムから出てくる時間(保持時間)が成分ごとに異なり分離されます。

MSとは

カラムで分離された成分はMSに導入されます。MS内部では、まずイオン源内でフィラメントからの加速された電子がカラムから出てきた化合物分子から電子を取り除きます。その結果、分子は電子を一個失って正の電荷を持ったイオンになるとともに開裂して正の電荷を持った破片(フラグメントイオン)を生じます(電子イオン化)。このようにして生成したイオンは高周波電圧を印加された四重極(Quadrupole QP)に送り込まれ、印加する高周波電圧を走査することによって、m/zごとにイオンを分離し検出します。
実際の測定では、目的とする成分に特徴的なイオンのm/zをモニターすることによって得られるマスクロマトグラムを用いて定量分析をします。

熱分解

熱分解は、ポリマー試料を高温に保った熱分解炉に落下し、ポリマーを熱分解し、その生成物をGC-MSに導入するための装置です。炉の温度を、ポリマーの熱分解温度より低い温度に設定すると、ポリマーを分解することなくポリマー中のPBB、PBDE、フタル酸エステル類などを熱抽出することもできます(熱脱着法)。

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