亜鉛めっき液中の主成分元素から微量元素の一斉分析

亜鉛めっき液中の主成分元素から微量元素の一斉分析

1.はじめに

 めっきは、製品の性能を高めるために、素材の表面に金属の薄膜を被膜する技術です。めっきの品質を維持するために、めっき液中の成分の管理はとても重要です。めっき液で管理が必要な金属成分は、主成分だけでなく、添加成分や微量成分があり、濃度は様々です。これらの金属成分を効率的に分析するには、高感度かつ、広範囲な濃度領域を測定できる分析装置が求められます。ICP発光分光分析法は、μg/Lから%オーダーまでの広いダイナミックレンジを持ち、このような分析に適した分析方法です。今回、島津マルチタイプICP発光分光分析装置ICPE-9820を用いて、亜鉛めっき液中の主成分元素から微量元素まで一斉分析を行いました。ICPE-9820は、塩が析出しにくいプラズマトーチの縦方向配置と、プラズマの軸(AX)/横(RD)両方向観測により、一斉分析を行うことができます。

2.試料前処理

ICPE-9820

 亜鉛めっき液2点を1mol/L塩酸で10倍(vol/vol)希釈し、測定用試料としました。測定値の妥当性確認のため、高濃度元素については、試料1を1mol/L塩酸で100倍、1000倍希釈した希釈試験試料を作製しました。微量元素については、試料1を測定試料と同様に10倍希釈した溶液に、測定元素の標準溶液を添加した添加回収試験試料を作製しました。

3.分析

 検量線法-内標準法により、亜鉛めっき液中の亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、カドミニウム(Cd)、銅(Cu)について分析を行いました。高濃度のZn、Ca、Fe、Mn、Tiについては希釈試験を、低濃度のAl,Cd,Cuについては添加回収試験を行いました。

4.結果

 Table 1に希釈試験と添加回収試験の結果を示します。Table 2に分析結果を示します。希釈試験結果、添加回収試験結果は、100%近い良好な結果が得られました。主成分のZnは低感度波長と横方向観測により、21g/L上限の検量線で良好な結果が得られ、微量元素は軸方向観測で精度良い結果が得られました。Fig.1に亜鉛(Zn)の検量線とスペクトル線プロファイルを示します。

Table1 亜鉛めっき液の分析結果

Fig.1 亜鉛(Zn)の検量線とスペクトル線プロファイル

5.まとめ

 ICPE-9820を用いることにより、亜鉛めっき液を、1回の希釈操作で、主成分元素から微量元素まで一斉分析できました。これにより、前処理時間の削減、分析時間の短縮、ランニングコストの削減効果を得ることができます。

マルチタイプICP発光分光分析装置ICPE-9800シリーズ

濃度を問わず多元素の一斉・迅速分析を可能にする精確性と、分析を容易にするソフトウエアの簡便性を備えた次世代装置です。さらに、業界最高水準のシステムで分析のローコスト化を実現。環境、医薬、食品、化学、金属など様々な分野でICP発光分光分析の頂を窮めます。