MALDI-TOFMSによるリン酸化解析(1)

MALDI-TOFMSによるリン酸化解析(1)

リン酸化ペプチドの検出に適した測定モードとマトリックスの選択

タンパク質の翻訳後修飾の一つであるリン酸化は生体中の重要な機能に関与しています。
MALDI法によるリン酸化ペプチドの検出方法についてご紹介します。
通常のペプチド測定では,より高い分解能と精度を求めてリフレクトロンモードで測定しますが,このモードではリン酸化ペプチドからリン酸基が脱離したニュートラルロスと呼ばれる現象により,本来観測したいリン酸化ペプチドのシグナルが検出されにくくなります。一般にこのような不安定な化合物は,まずリニアモードで測定します。

Fig.1に示すように,リニアモードではリン酸化ペプチドに相当するシグナルのみが観測されました。また,リフレクトロンモードでも,マトリックスとしてDHBを用いると比較的ニュートラルロスが抑制されたスペクトルが得られました。
他方,ニュートラルロスはリン酸化の有無を判定するために用いることができます。リフレクトロンモードとリニアモード,あるいはDHBとCHCAの比較により,ニュートラルロスを見出すことができれば,そのペプチドはリン酸化されている可能性が高いと言えます。

リン酸化ペプチド解析のもう一つの問題点は,リン酸化修飾によりペプチドの検出感度が著しく低下することです。そのため,タンパク質の酵素消化物からリン酸化ペプチドを観測するのが困難な場合が少なくありません。
この問題点を解決する方法として,マトリックスにリン酸を添加する,酸性を維持するためのTFA(トリフルオロ酢酸)の濃度を高くする,などがあります。
Fig.2はマトリックスとしてDHBを用いた場合のリン酸添加の効果を示しています。4種類のタンパク質を消化した後で混合した試料をリフレクトロンモードで測定しました。  
DHBのみで測定した場合,存在量の多いリン酸化ペプチドは観測できますが,存在量の少ないリン酸化ペプチドはほとんど観測できません。DHBにリン酸を加えたマトリックスを用いることによりm/z 3000付近のリン酸化ペプチドを観測できました。

Fig.2 リン酸添加の効果 (A)リン酸添加(0.5 %),(B) リン酸添加なし

このように,測定モードやマトリックスの組成を変えることにより,混合物中のリン酸化ペプチドでも検出感度が向上します。この基本的なステップを踏まえて,MS/MSなどの構造解析を行います。

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