内的発話の検出

頭表からのNIRS信号を用いて,被験者が声に出さない内的な発話を行ったタイミングとあらかじめ心の中で決めていた1から5までの数を推定しました。
図1のように2種類の送受光プローブ間距離( 7,18mm)を用いて左右全額部のNIRS信号の計測を行うとともに,皮膚血流と筋全図を同時に計測して,NIRS信号に対する皮膚血流や筋血流の影響を評価しました。

図1 多重解像度解析

MRI画像の脳表にプローブのチャンネル位置を投射。プローブ間隔18mmを3×5で左右全額部に(44ch),プローブ間隔7mmを左全額部に(1ch)配置。

決められた数字が読み上げられたときに被験者が早口言葉を声に出さずに唱える内言条件における,NIRS信号の典型例を示しました(図2)。Broca野近辺(代表チャンネル(ch11))を含む複数のチャンネルで,被験者があらかじめ心に決めていた数「3」が読み上げられると,Oxy-HbおよびTotal-Hb濃度変化の一過性上昇が見られました。

図2 NIRS波形の典型的例

Broca野で血流変化が起こった代表的チャンネル(ch11)

このような4名の被験者のNIRS波形を5名の評価者が目視による判定で,被験者があらかじめ決めた数を推測したところ,正解率は73%でした。

図3 内言時・外言時のNIRS波形、皮膚血流変化、筋電図例

早口言葉を声に出して唱える外言条件時には左右の広頸筋,側頭筋の筋電図が大きく変動し,これらの筋肉が活動されていることが確認されました。
ドップラー皮膚血流計による皮膚血流は外言期間中の持続的な上昇が見られ,短いプローブ間距離(7mm)のNIRS計測でも、Oxy-Hb, Total-Hb 濃度変化の外言期間中の持続的な上昇が見られました(図3)。
これに対し内言時には広頸筋,側頭筋の筋電図の変動は見られず,発声がされていないことが客観的に確認されました。また,ドップラー皮膚血流計では,短い一過性の上昇(期間約5秒,立ち上が潜時約3秒)がみられたものの,外言時ほどの大きく持続的な血流の上昇は見られませんでした(図3)。

図4 内言,外言,安静時のNIRSと皮膚血流の平均波形

影の幅は±1S.E.。安静時は心に決めていたのと違う数値が読み上げられたときの平均加算

Broca野付近の代表チャンネルににおけるNIRS信号およびドップラー皮膚血流信号を平均加算したものについても同様の結果が得られました(図4)。
これら結果より,発声を伴うNIRS計測実験課題では,少なくとも皮膚血流および筋活動の影響をNIRS信号の解釈を行う上で考慮する必要性があることが示されました。さらに,発声を伴わない内言課題であっても,一般には自律神経活動に由来する皮膚血流変動がNIRS信号に影響を与える可能性は残ります。したがって,脳機能計測を目的とする場合,皮膚血流や筋活動のNIRS信号への影響を排除する方法が特に重要になります。



以上の結果から,NIRS計測により被験者が心の中で早口言葉を唱えているタイミングを読み取り,被験者があらかじめ心の中で決めていた数字をある程度正しく推定できることが分かりました。また,プローブ間距離7mmのNIRS計測では皮膚血流の変動を反映したデータが得られ,プローブ間距離18mmのNIRS計測では皮膚血流の変動によらない脳血流の変動を反映したデータが得られることが確認されました。
内言時のNIRS信号が脳活動由来のものとして皮膚血流信号と区別して観測されたことは,今後,NIRS計測のBMI応用への期待が高まります。


(データご提供 : 順天堂大学医学部 北澤茂先生)

参考資料 : 岩野孝之,高橋俊光,滝川順子,川越礼子,渋谷賢,北澤茂(2010)
     ”近赤外スペクトロスコピーを用いた内的な発話の検出“,島津評論,Vol.66 No.3・4
*本データはFOIRE/OMMシリーズを用いて取得したものです。

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