プラスチックの水分率測定

工業材料の水分率は製品の品質を左右する場合があり,その水分率を測定することが多くあります。工業材料の水分率を測定する方法として,JISなどに公定試験法が決められているものがあり,そのほとんどは乾燥減量法です。乾燥減量法の原理は,まず水分を含んだ試料の重さを計測し,その後試料を所定の温度にコントロールされた恒温槽に入れて水分を蒸発させ,水分が無くなったところで試料の重さを計測することによって軽くなった重さを水分と仮定し,水分率を測定します。公定試験法では乾燥温度を100℃前後として恒温槽内に3~5時間放置させて乾燥させます。
そのため一つの試料の水分率を測定する時間が数時間を要し短時間に水分率を求めることが困難でした。
公定試験法に近い方法を用いて試料の水分率を求める装置として水分計が市販されています。これは質量計(電子天びん)に乾燥室を備えた構造をしており,試料が乾燥して刻々と減量していく試料質量から水分率をモニターできる機能を有しています。

今回,工業材料のひとつであるプラスチックの水分率を島津水分計MOC63uで測定した例をご紹介します。

■樹脂ペレットの水分率測定
Moisture content measurement of plastic

●乾燥減量法を用いた樹脂ペレットの水分率測定

Fig.1 樹脂ペレットを恒温槽へ入れる前の状態 Plastic Perett before to set up to oven

Fig.1 樹脂ペレットを恒温槽へ入れる前の状態
Plastic Perett before to set up to oven

プラスチックの水分率の公定試験法としてJIS等があります。プラスチックの水分率測定に該当する方法もありますが,ここでは恒温槽を用いた乾燥減量法でよく用いられる条件で測定しました。

【乾燥条件】
乾燥温度: 105℃
乾燥停止条件: 5時間
試料量: 5g
【結果】
水分率: 0.27%
乾燥時間: 5時間

●水分計を用いた樹脂ペレットの水分率測定

Fig.2 MOC63uに樹脂ペレットを載せ,乾燥終了後の状態 Plastic Perett to set on MOC63u

Fig.2 MOC63uに樹脂ペレットを載せ,乾燥終了後の状態
Plastic Perett to set on MOC63u

(1)TIMEモード

水分計では試料の状態や乾燥時間短縮などのため乾燥条件をいろいろ変更することができます。MOC63uでは乾燥温度を50℃~200℃まで1℃毎に設定できるほか,乾燥を停止するモードを4種類から選択することができます。ここでは乾燥を開始してから一定時間経過後乾燥を停止する「TIMEモード」で測定し,乾燥温度は105℃としました。

【乾燥条件】
乾燥温度: 105℃
乾燥停止条件: 1時間
試料量: 20g
【結果】
水分率: 0.25%
乾燥時間: 1時間

Fig.3 TIMEモードで樹脂ペレットの水分率を測定した乾燥曲線(縦軸:水分率 横軸:時間) Moisture Graph of Salt Malted Rice(Spindle:Moisture Axis:Time)

Fig.3 TIMEモードで樹脂ペレットの水分率を測定した乾燥曲線(縦軸:水分率 横軸:時間)
Moisture Graph of Plastic(Spindle:Moisture Axis:Time)

(2)RAPIDモード

TIMEモードでは1時間で乾燥減量法に近い水分率が得られましたが,もっと短時間で測定したいときは「RAPIDモード」という方法があります。これは乾燥開始直後は200℃で試料を加熱して急速に水分を蒸発させ,その後所定の乾燥温度に下げて水分をゆっくり蒸発させて水分率を求める方法です。そのため最初のステップで200℃で乾燥させるときの停止条件を設定し,次のステップで乾燥温度と停止条件を設定しますので,条件は2段階設定します。

【乾燥条件】
(1)第1ステップ
乾燥温度: 200℃ (設定不要)
乾燥停止条件: 0.02%
(30秒間の減量率が0.02%以下になれば次のステップに移行する)

(2)第2ステップ
乾燥温度: 105℃
乾燥停止条件: 0.01%
試料量: 20g

【結果】
今回のRAPIDモードの測定では水分率が非常に小さく,乾燥停止条件にすぐ達してしまい,うまく水分率が測定できませんでした。そこで乾燥時間を短縮するため,「TIMEモード」で乾燥温度を(1)よりも上げて測定を行いました。

(3)TIMEモード

【乾燥条件】
乾燥温度: 150℃
乾燥停止条件: 15分
試料量: 20g

【結果】
水分率: 0.27%
乾燥時間: 15分

●各種方法で樹脂ペレットの水分率を求めた結果のまとめ

公定試験法,TIMEモード,RAPIDモードの水分率と測定時間をまとめますと以下のようになります。

測定方法 水分率 測定時間
乾燥減量法 0.27% 5時間
TIMEモード(105℃) 0.25% 1時間
TIMEモード(150℃) 0.27% 15分

●考察

  • 乾燥減量法では恒温槽内で乾燥させる時間が5時間と長いので水分率の結果を得るには長時間要します。
  • 水分計を使用して乾燥温度を乾燥減量法と同じ105℃で測定した(TIMEモード)結果は,乾燥減量法より0.02%低い値となりました。若干小さい値ですが,このままもっと長時間乾燥をし続けると乾燥減量法による水分率が得られると思われます。
  • 「TIMEモード」の1時間でも測定時間が長いと思われる場合,乾燥温度を上げる方法があります。
  • 時間短縮のため「RAPIDモード」で測定しますと水分率が非常に小さいためうまく測定できませんでした。そこで「TIMEモード」で乾燥温度を150℃に上げて測定したところ15分で乾燥減量法と同じ水分率になりました。
  • 150℃で乾燥させますとペレットが一部溶けたようになっています。しかし分解とは異なるようで,冷却後はペレットが互いにくっついて1枚の板状になっていました。

2013年6月掲載

水分計 MOC63u

水分計 MOC63u

MOC63uは正確な水分率測定を簡単に手早く行うことが可能な電子式水分計です。
試料皿にサンプルを載せ,カバーを閉めるだけで測定を開始。あらゆるサンプルに対応し,ユーザの作業効率アップに貢献します。