多層フィルム内部の異物の観察と計測(1) /OLS,SFT
- フィルム内部のレーザー顕微鏡観察 -

 製品製造における大事な工程管理のひとつが異物管理です。とくに高機能性を持たせた透明多層フィルムでは異物の混入は性能劣化をともなうために絶対に避けなければなりません。異物混入や付着が発生した場合は,異物が表面にあるのか?または内部にあるのか?さらに多層フィルムの場合では異物が何層目にあるのか?を突き止めることが異物混入の原因究明と対策に重要となります。

異物が混入した多層フィルム

図1 多層フィルムの断面写真
図1 多層フィルムの断面写真

観察を行なった多層フィルムの断面写真を図1に示します。この多層フィルムは表面層が厚み100ミクロンの塩化ビニル(PVC)層,内部層が厚み20 ミクロンのポリ塩化ビリニデン(PVDC)層,およびポリエチレン(PE)層から成ります。PVC は1.5~1.6程度の屈折率であると考えられます。

図2では,あきらかに内部に異物があることがわかりましたが,表面に焦点を合わせたカラー観察でも異物が確認できています。この異物は本当に表面にあるのでしょうか?それとも内部にあるのでしょうか?

図2 多層フィルム中の異物カラー観察像

図2 多層フィルム中の異物カラー観察像

確かめるために通常の大気でのLSM観察を行ないました。その結果を図3に示します。図3(a) は観察した異物のカラー観察像,図3(b) はLSMによる断面観察を示します。LSM断面観察は,深さ方向のレーザー反射を捉えたものです。これらの結果, この異物が表面から深さ3 µmのフィルム内部にあることがわかります。

図3 フィルム表面近傍の内部異物の観察像

図3 フィルム表面近傍の内部異物の観察像


3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

レーザー顕微鏡(LSM)は広い視野の3D形状観察と測定が簡便にできることから,薄膜の厚み計測や形状評価に利用されています。
さらに試料が損傷しない条件まで入射レーザー強度を小さくしても十分な感度で表面観察が行なえます。