ポリプロピレン繊維の高速引張試験と観察

 合成繊維の世界では高い性能を目指した製品開発が盛んで、高機能な(各種強度や耐性に優れた)製品が様々な分野で用いられています。
特に自動車や航空宇宙産業分野では繊維の柔軟性や軽量性といった特長が注目され応用が拡がっていますが、同時に強度面では従来の静的な限界値だけではなく、高速負荷(衝撃)時の特性も押さえておく必要が出てきています。
このような評価例として、今回は最高20m/sec の負荷速度で引張試験を行なうことが出来る高速引張試験機HITS-T10に繊維用引張グリップを取りつけ、ポリプロピレン繊維の引張試験を実施しました。
 また、試料の破断時の様子がどのようなものかを探るため高速度ビデオカメラを用いて観察した結果もご紹介します。

図1に得られたデータを、試験力とグリップ間変位の関係として表しました。波形としては単繊維ごとの挙動のばらつきから細かな振動が見られるものの、全体としては引張負荷時の特性を明瞭に示しており、最大試験力が約85N、グリップ間変位12mm前後から破断が始まり、同約15mmにて完全破断していることを読取ることができます。

図2は今回の高速引張試験における、試料(ポリプロピレン繊維)の破断時の様子を探るために高速度ビデオカメラで観察した様子です。
撮影速度は、32000 コマ/sec とし、得られた画像一部を示しました。
これを見ると、破断現象は繊維の外側から徐々に進んでいることがわかります。

試料の取り付け状態と高速引張試験結果

ポリプロピレン繊維の破断の様子(撮影速度:32000fps)


 

高速引張試験機

高速引張試験機ハイドロショットHITS-T10は最大時速72km/h(20m/ sec)までの任意速度の引張試験により,各種材料の動的強度情報である,S-S曲線(応力ーひずみ線図)・最大試験力・エネルギ・変位等のデータを提供できます。
 

 

 

高速度ビデオカメラ

島津高速度ビデオカメラHyperVision HPV-2Aは、撮影速度100万コマ/秒という超高速撮影能力を有しており、撮影速度に関係なく8.1万画素の高精細な撮影が可能です。 高速現象を可視化する手段として有効です。