セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーが築く未来の世界
人類は第二次産業革命以降,化石燃料を利用し,産業を高度に効率化してきました。20世紀後半,産業が発展したことで,人々の生活は豊かになり,周りには様々なものがあふれるようになりました。21世紀となった現在,その副産物として地球温暖化など地球規模の環境問題が顕在化しています。
セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofibers:CNF)は,「軽い」「強い」「硬い」といった物理的な特徴を有しており,素材として高機能である事に加え,複合材料の強化材として用いた際の軽量化が期待されています。化石燃料や無機物を原材料にした高機能ナノ素材に対し,植物バイオマスから作り出されるCNFは,環境適応性,安全性に優れていることはもちろん,性能面においても優位性が確認されています。
パルプにCNFを混抄したスピーカーの振動板は,ヤング率を向上させ,高音域の再生帯域を拡大し,より高音質な再生を可能にしました。また,ランニングシューズのミッドソールにCNFを添加することで,軽量化と優れたクッション性を実現。さらに,破れにくい使い捨ておそうじシート,速記してもかすれずにじまないボールペンインキ,ベタつかず瑞々しい感触を合わせ持つ化粧品,保水性の非常に高い美容用フェイスマスクへの応用など,身近な商品にCNFは使われはじめています。
今後,軽量高強度なCNF樹脂複合材料を活用した輸送機用構造材料,導電性の機能を付加した透明CNF基板など,CNFの活躍の場が広がっていくことが期待できます。
セルロースナノファイバーの主な種類と特徴
CNFの製造方法は2種類に大別されます。原料の植物由来繊維を解繊してより微細な繊維を作るブレイクダウン型と,糖を原料として微生物の代謝物である微細繊維を作り出すボトムアップ型です。ブレイクダウン型には外力によって解繊を行う物理解繊と触媒などの化学反応を用いた化学解繊があります。
一口にCNFと言っても,製造方法によって得られるナノ繊維の形状や特性は様々です。機械解繊法は砥石や石臼による解繊が多く用いられています。数mmのパルプ繊維をせん断力で解きほぐしナノ繊維にすることから,繊維の長さや太さを管理することが難しい反面,大量生産に向いています。水中衝突法は圧力差,マイクロキャビテーションによって解繊されます。水が緩衝材となり解繊に必要な外力が全体的に均質に伝わることにより,取り出されるナノ繊維の太さが一定の範囲に収まる特徴があります。また,TEMPO酸化法は化学解繊法の代表格です。TEMPO酸化触媒でセルロースミクロフィブリルにカルボキシ基を導入し,分子鎖反発によって水分散性の高いCNFを得ることができます。発酵ナノセルロースは酢酸菌がグルコースの代謝産物としてCNFを生成し,繊維径が均一で超高アスペクト比である特徴を有しています。

機械解繊法
愛媛大学 紙産業イノベーション
センターご提供

水中解繊法

化学解繊法(TEMPO触媒酸化)
東京大学磯貝教授ご提供

発酵ナノセルロース
北海道大学田島准教授ご提供
セルロースナノファイバー評価計測マトリックス
CNFの評価
評価項目 | 測定装置 | 製品・システム名 |
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紫外可視分光光度計 | ||
フーリエ変換赤外分光光度計 | ||
3D測定レーザー顕微鏡 | ||
走査型プローブ顕微鏡 | ||
X線回折装置 | ||
示差熱・熱重量同時測定装置 | ||
高速液体クロマトグラフ | ||
ナノ粒子径分布測定装置 | ||
シングルナノ粒子径測定装置 | ||
水分計 | ||
エネルギー分散型蛍光X線分析装置 | ||
マルチタイプICP発光分光分析装置 |
CNF複合材料の評価
評価項目 | 測定装置 | 製品・システム名 |
---|---|---|
マイクロフォーカスX線CTシステム | ||
示差走査熱量計 | ||
卓上形精密万能試験機
高速衝撃試験機 |