軽量化脱炭素化を両立するCNF樹脂複合材料の現在と未来

Q : 実用化に向けて、残された課題はなんですか?

A : コストと性能のバランスが課題です。現状CNF自体のコストが対樹脂用途には高いうえ,それに見合った性能が出ていません。逆に現状の性能でもCNFのコストが低ければ使えるところは沢山あると思います。CNF/樹脂の性能としては,耐衝撃性が課題です。

Q : CNFの計測や評価、分析技術についても、もう少し深堀した内容も一度お聞きしたいです。

A : 評価や分析技術は,残念ながら京都市産業技術研修書は得意分野ではありません。日々行っている評価については,お話することは可能ですので,必要あれば京都市産業技術研究所までお問い合わせをください。
※お問い合わせいただく場合は京都市産業技術研究所(http://tc-kyoto.or.jp/)様ホームページ内のお問い合わせフォームにて,仙波様宛で,「島津製作所セミナーに参加しての質問」と記載のうえご連絡ください。

Q : CNFのサンプルはどこで入手可能ですか。

A : 多くのサンプルや商品があります。京都市産業技術研究所ホームページに,CNFの入手先リストがありますので,アクセスください。(http://tc-kyoto.or.jp/2021/03/CNF_Sample_11th.pdf

Q : 複合樹脂中におけるCNFの解繊・分散が物性に及ぼす影響。例えば、CNFが細かくほぐれてばらつて分布している方が熱伝導性が良いなど。

A : 熱伝導性への知見はありませんが,樹脂にCNF10%入れても大きくな変化は無いと思います。CNFは樹脂中でネットワーク構造を作ると言われておりますので,比較的低いパーコレーション濃度を達成できると思います。これを活かして,アイデア次第で樹脂に機能を付与することは可能かと思います。

Q : セルロースの含有により、耐候性、腐食性、脆性のような自然環境由来の経年劣化の進行に影響は無いのでしょうか?

A : これまでに耐候性試験で,問題無しという結果もあれば,問題ありという報告もあります。CNFと樹脂の密着性,試験条件で大きく結果が変わるようです。ただ,親水性の天然物を添加するので,影響が0ではないのは間違いないと思います。

Q : 吸湿性が高いPA系の自動車部品が吸湿による劣化で破損する問題が市場で散発しています。CNFも同様と考えられますが、吸湿しても劣化しない対策を御存知でしたら紹介願います。

A : 吸湿が厳しい部品には使えないと思います。設計をしっかりして,使える部分に吸湿を見越して使っていくということになると思います。

Q : ウレタン樹脂について、セルロースナノファイバー添加の実績や知見は有るものでしょうか。

A : 過去に数社チャレンジしていると思いますが,京都市産業技術研究所の検討ではないため,申し上げられません。特許等を検索されては如何でしょうか。

Q : 講演の中で材料検討にも取り組んでおり、提供の話もあったかと思います。参考までに手続きを教えていただけるとありがたいです。

A : 京都プロセス材料については,お問い合わせいただければ,内容をお伺いしたうえで出来る限りの橋渡しをさせていただきます。
※お問い合わせいただく場合は京都市産業技術研究所(http://tc-kyoto.or.jp/)様ホームページ内のお問い合わせフォームにて,仙波様宛で,「島津製作所セミナーに参加しての質問」と記載のうえご連絡ください。

Q : CNFと硬質PVCの複合化に関する資料を以前に拝見したことがあるのですが、こちらの取組は進んでいるのでしょうか。

A : 進んでおりますが,進行中のため詳しくは申し上げられません。別の機会にお話しできればと思います。

Q : 耐面衝撃についてはどのようにお考えですか。セルロースファイバーとの差別化をどのようにお考えですか。

A : 面衝撃もCNF/樹脂は不十分です。セルロースファイバーとは例えば麻繊維などのことでしょうか。CNFと従来繊維では違う点が多々あります。添加量,成形加工性,表面平滑性,コストなど,長所短所があると思います。

Q : CNF含有樹脂について、耐候性や耐用年数など、(自動車など)耐久消費財用途としてどのくらいの実用性があるものか。

A : 実用性は十分あります。ただ吸湿などの問題があるので,使える部品,使えない部品はあると思います。

Q : ナノ領域のファイバーで、より詳細な計測を大規模に行うために必要となる測定装置や演算環境の想定はありますでしょうか

A : 京都市産業技術研究所は測定,分析は得意でなく知見がありません。ファイバーの形状を大規模に測定する装置はなかなか見つからないと考えますが,レオロジー,粒度分布などが現状できる測定かと思います。

Q : パルプ直接混練方法によりパルプ繊維を二軸押出機のせん断力で樹脂中で解繊しますが、解繊サイズ(繊維径)の分布はどのようになりますでしょうか。

A : 繊維径は顕微鏡で見える範囲でしか調べられておりません。解繊し易いポリアミドであれば,細い部分で30nm~,太い部分で1µmとなります。解繊し難いポリプロピレンであれば,細い部分は数十nmですが,太い繊維が多く,そのサイズも数µmとなります。

Q : CTEの評価をされていましたが、温度範囲を教えてください。

A : PA6は0~100℃,PPは室温付近から算出しております。

Q : インジェクション成形の場合はMFRの問題で10%に制限されるようですがブロー成形の場合は最大何%配合可能でしょうか?またコストが気になります。今後のコスト低減の目標は?

A : インジェクションも樹脂種によっては,10%以上も可能です。ブロー成形では,入れすぎると伸張し難くなりますので5%くらいまでが良いかと思います。少量添加でドローダウンは抑制できると思います。コスト目標は,まずはCNF自体を1,000円/kg程度かと思います。

Q : •CNF/PA6などの難燃性について知りたい

A : 残念ながら測定をしたことがありません。

Q : 環境省のNCVプロジェクトの成果についての説明はありましたが、国のプロジェクトは現在どうなっているのでしょうか。

A : 小生が関わっている事業限定の回答ですが,経済産業省系のプロジェクトは,企業が主事業者となり,実用化,コストダウンを目指した内容,環境省系のプロジェクトは,脱炭素,環境汚染対策などの内容で,研究開発から実証化まで幅広くなっています。

Q : 環境意識が高まり、コンセプトカーもでき、すぐにも社会実装され、広く応用されると思ってましたが、話題性の方が先走っているように感じます。実際に現場で対応されていて、社会実装の壁は何だと思われますか? また、どのようにその壁を越えていけるとお考えでしょうか?

A : 話題が先行しているのは否めません。我々は,CNFの有用性,魅力を発信し,皆様のご意見を材料改良に活かさせていただいております。また皆様のアイデアで,何処に使えるかを考えてもらえると非常に助かります。壁は,やはりもっと魅力的な特性を見出すことが第一であり,その次にコストだと思います。

Q : CNFの課題としてVOCを挙げられていましたが、具体的にはどの成分の揮発が多いのでしょうか?

A : これまでの分析では,アルデヒドが出る場合があると聞いております。ただ発生源はCNFでない可能性も高く,詳細な調査が必要であると思います。

Q : フィルム状に成型することは可能でしょうか?可能な場合どの程度の厚さまで可能でしょうか?

A : 京都プロセスでは,低コスト化,繊維長維持のため,数十µmのパルプを混練機で解繊しております。解繊不十分な数µmの繊維が含まれることがありますので,フィルムなどの薄い製品は難しいです。セルロースの原料に解繊済みのCNFを使用すれば,かなり薄いフィルムも可能かもしれません。

Q : VOCを低減する具体的な手法などありますでしょうか?

A : これまで繊維の表面処理剤,樹脂添加剤などからの発生もあったので,発生源を見極め対処すれば,低減は可能かと思います。

Q : 漂白パルプを原料に使用すれば、自然色の複合材料が得られるのでしょか?

A : 着色の少ない材料が得られます。ただ真っ白というのは,加工温度がかなり低い樹脂でない限りは難しいと思います。着色はヘミセルロースの分解によると考えられますので,原料パルプの選定も大きく影響すると思われます。

Q : 発泡成形について、樹脂材料と発泡成形の発泡方法(物理発泡か化学発泡か、射出発泡成形か)を教えて頂きたい

A : これまでに発泡剤として,物理発泡,化学発泡,マイクロカプセル発泡を使用し,各々に対してバッチ式や射出発泡を実施しております。ほとんどの発泡が適用可能です。

Q : 衝撃試験で、ガラス繊維だと引き抜けるのに対して、CNFだと引きちぎれる理由は何とお考えでしょうか?

A : 京都プロセスでは,CNFの最小エレメントまでの解繊ができていない部分が多く,CNFの集合体が分散しております。その集合体に応力がかかることで集合体が破壊し,引きちぎれているのかもしれません。CNFの最小エレメントで分散できればこのようなことは起こらないかもしれません。

Q : CNFを配合することで引張強度などの短期強度が向上することは分かりました。では、クリープ強度のような長期強度特性については性能への影響はありますでしょうか?

A : クリープは京都市産業技術研究所では評価をしておりません。他の長期特性で,現行材料を上回る結果が得られたこともありますが,長期特性は今後さらに評価が必要です。

Q : 京都プロセスの説明で、樹脂と化学変性したCNFの複合化を二軸混錬機で実施するとのことでしたが、樹脂原料とCNFをホッパーから投入して上手く押出機に入っていくのかが疑問です。サイドフィーダーは使用しなくて問題無いのでしょうか?

A : 変性したパルプはかさ高く扱いにくいです。生産では,押込みフィーダーやサイドフィーダーが必要になってきます。

Q : ゴムに添加した実績はございますか?

A : ゴムは京都市産業技術研究所では取り組んでおりません。他機関にて,検討実績はあります。必要あれば,ご連絡ください。

Q : 貴重な講演ありがとうございました。内装部品の今後の課題として挙げられた「VOC」「臭気」について、何かしらの対応策は検討されているのでしょうか?

A : VOCは,原料のどの部分から発生しているのかを特定し,そこを改良することで低減は可能だと思います。用途によって,VOC対策を進めるということになると思います。

Q : ゴムに添加した際の分散性について過去知見あれば教えてください。

A : ゴムは京都市産業技術研究所では取り組んでおりません。他機関にて,検討実績はあります。必要あれば,ご連絡ください。

Q : NCVプロジェクトは現在、継続されているのでしょうか。

A : NCVプロジェクトは,2019年度で終了いたしました。

Q : マトリックス樹脂によって化学変性の方法を変えられると思いますが、化学変性の最適条件はどの様に判断されますでしょうか?力学物性あるいは界面密着性(顕微鏡観察)でしょうか?

A : 京都市産業技術研究所では,力学的特性,分散性から判断しております。

Q : CNF単体で使用するよりもCNFの複合材で使用することが多いのはやはりコストや成形性の問題が大きいからなのでしょうか?

A : 京都市産業技術研究所では主にプラスチックを前提としたCNFを取り扱ってきておりますが,CNF単体での開発を進めている機関もあります。

Q : 従来のプラスチックの生産量に影響が出るとお考えでしょうか?

A : 従来のプラスチックの一部を置き換えるのが最初の目標です。影響はほとんどないと思います。

Q : 曲げ強度や衝撃吸収値の評価では、測定値のバラツキはどの程度でしょうか? CNFの分散状態との関連はあるのでしょうか?

A : 通常のプラスチックの試験と比較してバラツキは大きく変わりません。分散が良くないとバラツキは大きくなる方向です。

Q : CNFを複合材として使用した場合、CNF単体よりも力学的特性が落ちると思うのですが、どれぐらい落ちてしまうのでしょうか?

A : CNF単体材料ではCNF間の界面,複合材ではCNF/樹脂界面が大きく影響するため,どのくらい落ちるかは一概には言えません。樹脂はCNFに比べると柔らかいので,弾性率,強度は大きく低下します。

Q : PC-CNF複合体を射出圧縮成形してNCVの部品に応用されていましたが、着色はほとんど無いのでしょうか。また、その時に使用したCNFはどのような変性をされているのでしょうか。

A : 他機関での製作されたので,京都市産業技術研究所では詳細不明です。素人目には透明感は通常のガラスと変わらないです。

Q : 冒頭でNCVのご紹介がありましたが、今後CNF樹脂が車体の骨格部品に適用されていく可能性はあるとお考えでしょうか?

A : NCVでは,京都市産業技術研究所以外の機関がCNFの紙管を提案しております。軽量,高物性ですが,これが自動車に使えるかどうかは,様々な試験をしなければならないと思われます。

Q : CNFと母材の界面強度を評価する方法はありますか?

A : そこまで詳細な検討をしたことはありません。SP値や界面張力などを算出し目安をつける程度は可能かと思います。

Q : 難燃グレードはどのレベルまで可能になるでしょうか

A : 京難燃はPVCはV0を維持できておりました。しかし他の樹脂の場合は,検討例がなく回答できない状況です。

Q : 社会実装するためには、何が問題と思われますか? やはりコストでしょうか?

A : 魅力ある性能を実現しつつコストを下げることだと思います。パフォーマンスとコストのバランスだと思います。

Q : 分散度合いの評価はどのようにされていますか。数値化などはできますか。

A : できれば透過型電子顕微鏡などで撮影した写真を画像解析がベストかと思います。日常の実験では,偏光顕微鏡で簡易に観察しております。

Q : 講演の最後の方に「バイオプラ+CNF」の話がありましたが、現状使われている「PP+タルク」の代替として、「バイオPE+CNF+α」は置き換えできそうなイメージでしょうか?

A : PP/タルクで耐衝撃性の要求が低い材料であればバイオPE+CNEで性能的に置き換えは可能です。

Q : 曲げ試験は比較的ばらつきが少ないとのことですが、サンプルカットの時、測定などで他に注意している点はございますか。

A : 曲げ試験片は射出成形で作製しておりますので,形状のブレも小さく,安定した測定結果が得られております。注意点は,射出成形時のヒケの発生を抑えることです。

Q : 化学変性で樹脂と馴染みを良くしたCNFを樹脂と分離する良い方法はありますか。CNFのみ取り出して確認したいです。

A : 樹脂を溶剤で溶かして分離しております。樹脂が少し残ることもあります。

Q : PP/CNFの衝撃試験において、ゴム成分にクレイズが見られないのはなぜだと考えていますか。

A : CNFが樹脂の変形を抑え込んでいるためであると考えられます。

Q : CNFの分散具合を光顕で簡易的に観察したとおっしゃっていたが、大体のCNFの凝集サイズと、分散度合いの評価方法(画像処理など)をご教授いただきたい。

A : 光顕で見えるのは,マイクロメーターサイズの繊維です。CNF化すると,モヤになって観察されます。マイクロメーターサイズの繊維を減らし,モヤの領域が増えていないかを観察しております。

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