LCMS-9030
四重極飛行時間型質量分析計によるインタクトアルブミンの分析
ユーザーベネフィット
- 四重極飛行時間型質量分析計LCMS-9030を用いることにより、インタクトタンパク質の分析が可能です。 - 高分解能・高質量精度質量分析計データ向けソフトウェアLabSolutions Insight ExploreTMを用いることにより、高精度な多価イオン解析が可能です。
はじめに
ヒトアルブミンは主に肝臓で作られるタンパク質です。血管中の血液量や体内の水分量を調整することにより浸透圧を維持する、血管内の物質と結合して保持・運搬するといった重要な働きを担います。アルブミンは血管内のみならずリンパ、唾液など血管外にも広く存在します。そのためアルブミンの酸化や糖化は全身の状態を反映していると考えられています。 アルブミン分子中には35個のシステインが存在しますが、34番目のシステイン(Cys34)のみが分子内でジスルフィド結合を形成せず遊離の状態で存在します。このCys34のチオール基がSHの状態であるものを還元型アルブミン、遊離のシステイン等とジスルフィド結合したものを酸化型アルブミンと呼びます。また、アルブミンにはグルコース結合部位が複数あり、高血糖になりグルコースが結合したものは糖化アルブミンと呼ばれます。 酸化ストレスはがんや動脈硬化、糖尿病等の生活習慣病、老化などの多くの疾患と関連していると考えられています。酸化ストレスの上昇により酸化型アルブミンが増加することが知られており、酸化型・還元型アルブミンが酸化ストレスのマーカーになることを期待され、実際の患者検体を用いた病態との関係も報告されています1)。 本稿では、四重極飛行時間型質量分析計LCMS-9030を使用し、健常者と糖尿病患者のインタクトな状態のアルブミンの分析を行いました。酸化型・還元型アルブミンおよび糖化アルブミンを確認した例を紹介します。
2023.08.29