LC/MSとGC/MSを用いた遺伝子変異ショウジョウバエのメタボロミクス差異解析

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ユーザーベネフィット

- マルチオミクス解析パッケージを用いることで,LC/MSやGC/MSにより得られた測定結果を簡便に可視化できます。 - LC/MSとGC/MSの測定結果を統合して代謝マップに出力することで,より多くの代謝物を網羅的に表示することができます。

はじめに

遺伝子変異とは、DNA塩基配列に起こる変化のことで、置換、挿入、欠失など様々な種類があります。親から受け継がれる先天的なものと、環境要因(放射線、化学物質、食習慣、微生物など)や細胞分裂におけるDNAの複製エラーによる後天的なものに分かれます1)。遺伝子変異が生じると、タンパク質が正しく合成されなくなったり、機能しなくなったりする可能性があります。1つまたは複数の遺伝子変異によって引き起こされる病気を遺伝性疾患と呼び、ライソゾーム病、筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症などがあります。遺伝子疾患は狭義に遺伝病とも称されますが、現在では次世代に遺伝しない場合も含めた概念となっています。また、生命維持のために必須である代謝物の種類や濃度は、個人の健康状態や体質などに影響されるため、様々な病気の兆候を示すバイオマーカーとして注目されています。代謝物は生活習慣に加えて、遺伝子にも由来することから、代謝物とゲノム情報の統合解析は、疾患の治療薬開発や個別化医療につながる可能性のある重要な基礎研究とされています2)。そこで、遺伝子変異が代謝物に及ぼす影響を調べる手法が重要になります。本アプリケーションでは、黄色ショウジョウバエに長寿命となるような遺伝子変異を起こし、野生型および変異型ショウジョウバエの代謝物を液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)LCMS-8060NXとガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)GCMS-TQ8040 NXで測定しました。 GC-MSによる測定結果の詳細につきましては、アプリケーションニュース01-00410をご参照下さい。測定結果から野生型と変異型の差異を見つけるため、「マルチオミクス解析パッケージ」を用いて解析しました。マルチオミクス解析パッケージは多変量解析(主成分分析や階級クラスター分析など)やボルケーノプロット、代謝マップなどのデータ可視化機能を備えた解析ソフトウェアです。これらの統計手法を用いて、野生型と遺伝子変異型のショウジョウバエを比較し、代謝物に関する違いを解析した例をご紹介します。

2023.04.20