Ar単原子イオンを用いたSEI被膜の深さ方向分析によって生じる構造破壊の実例紹介

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ユーザーベネフィット

- Ar単原子イオンによるSEI被膜の深さ方向分析では、構造や膜厚の解析が困難であることを実例を挙げて紹介します。 - ArガスクラスターとAr単原子イオンによって得られる、Depth profileの違いを紹介します。

はじめに

リチウムイオン2次電池(LIB)は、スマートフォンやパソコンなど、身の回りにある様々な電子機器に使用されています。LIBの電池性能は、負極上に形成されるSEI(Solid electrolyte Interphase)被膜に大きく左右されます。SEIは、充電時に負極表面で生じる電解液の還元分解によって形成され、リチウムイオンを含む有機物とリチウム無機物から成る被膜として知られています。負極上に形成されたSEI被膜は、電解液の分解を抑制し、電池を安定動作させる重要な役割を果たしますが、必要以上に厚くなると、電池の性能低下を引き起こします。このためLIBのさらなる性能向上には、その構造や厚みを解析し、SEI被膜を制御することが重要です。 SEI被膜は、ナノオーダーの厚さで負極上に形成され、大気に触れると変質することが知られています。このため、表面から約10 nmまでの情報が得られ、かつ大気非暴露の環境下で分析できるX線光電子分光法(XPS)が測定に適しています。またXPSでは、試料にArイオンを照射し表面をスパッタエッチングすることで、SEI被膜の厚みや構造を解析することが可能です。XPSの深さ方向分析には、単原子イオンとクラスターイオンが用いられています。それぞれに長所と短所がありますが、SEI被膜の深さ方向分析には、Arガスクラスターイオンが適しています。 本稿では、Ar単原子イオンとArガスクラスターイオンでLIB負極上に生成されたSEI被膜を深さ方向に分析したDepthprofileを比較し、Ar単原子イオンによるSEI被膜の深さ方向分析が困難である実例をご紹介します。

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