
低分子医薬品
医薬品分野において新薬の開発はもちろん重要なことですが,患者に対し,如何に副作用少なく,しかし,患部においては大きい効果を発揮するように薬物を投与するということも,同様に大変重要な問題です。必要なときに必要なだけ,必要な場所にのみ集中的に薬物を届けるための技術として,ドラッグデリバリーシステム(=DDS:Drug Delivery System 薬物送達システム)があります。特定の部位に薬物を集中させる技術は幾つかありますが,リポソームを利用した技術もそのうちの一つです。 我々のからだを形作る細胞は細胞膜によって外界と隔てられています。この生体膜の主要成分であるリン脂質を水溶液中に懸濁すると,リン脂質の極性基が水分子により水和し,非極性基(リン脂質の脂肪酸部位)が内側に集中した生体膜と同じ様な脂質二重層の膜構造が形成されます。ここで膜構造が安定に存在するためには,膜の端ができない様な構造となる必要があるため,水溶液中に懸濁されたリン脂質は,ちょうど風船のように端のない閉鎖小胞を形成することになります。これがリポソームです。ですから,リポソームは生体膜と同じ二重層構造の脂質膜に隔離された内水相を有する,カプセルのような構造をとることになり,中に薬物を封入することが可能です。 またリポソームは,大きさや脂質組成を容易に調節できるので,封入可能な薬物も,水溶性薬物,脂溶性薬物,高分子等と幅広いものになります。また,大きさ(=粒子径)を制御することで,体内の特定の部位にのみ吸収されるようにすることも可能です。したがって,DDS 分野においては,リポソームの粒子径制御と測定は非常に重要なものとなります。 今回のニュースでは,2 種類のリポソームを,最新の測定装置である SALD-7100 で測定した結果をご紹介いたします。
2006.10.30