食品・飲料
ポリ塩化ビニルの赤外スペクトル
ユーザーベネフィット
- 特定のピークの有無からPVCを定性できるため、添加剤量が非常に多い場合でもPVCの存在を確認できます。 - PVCは指紋領域に多くのピークを持たないため、PVC中に含まれる添加剤の定性を容易に行うことができます。
はじめに
ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、電気絶縁性、難燃性などに優れた合成樹脂で、フィルム、合成皮革、繊維、電線被覆、ロープ、玩具など様々な用途で広く利用されています。このPVC樹脂にはその用途に合わせて可塑剤や安定剤、充填剤などの添加剤が加えられていますが、可塑剤の添加量によって硬質PVCと軟質PVCに分けることができます。従来、軟質PVCにはフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(フタル酸ジオクチル)などのフタル酸エステル系可塑剤を10%以上の含有量で添加したものが多く使用されてきました。PVCは比較的赤外吸収の弱い物質のため、フタル酸エステルを多量に含むPVCはその影響を強く受け、PVCよりもフタル酸エステルに類似した赤外スペクトルを示します。このため、軟質PVCの多くがフタル酸エステルと同様の赤外スペクトルを示していました。しかし、このフタル酸エステル系可塑剤は発がん性など人体への影響が懸念されることから用途や含有量などが規制されるようになり、これに代わるものとして様々な可塑剤が添加された軟質PVCが市販されるようになっています。 可塑剤を多量に含む軟質PVCはその影響を大きく受けた赤外スペクトルを示すため、軟質PVCには様々な赤外スペクトル形状が存在します。今回は、このような軟質PVCの赤外スペクトルについてご紹介します。
2010.02.02