フーリエ変換赤外分光光度計FTIRを用いたASTM E2412に基づく潤滑油の劣化評価

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はじめに

潤滑油は基油と添加剤から成り、機械内部の潤滑、冷却、防錆等を目的として使用される油です。例えば、エンジンの潤滑油であるエンジンオイルは、エンジンの正常な動作に欠かせない要素です。エンジン内部では各部品が高速で動作し、その際に金属の摩耗や焼き付き(シリンダー又はピストンに傷が入る現象)が生じます。これらを軽減するために潤滑油で内部を潤滑します。さらに、エンジンでは燃焼や回転運動により種々のスラッジ(汚れ、燃えカス)が発生し、これによってエンジンの性能や寿命の低下を引き起こします。潤滑油は、スラッジを吸着することや分散させる役割も担っています。 潤滑油は酸化や添加剤の消耗、スラッジの蓄積等により劣化します。潤滑油の劣化は、エンジンの寿命低下や動作不良の原因となるため、劣化を把握し適切な時期にオイル交換を行うことが必要です。 ASTM規格は、潤滑油を種々のパラメータから評価する方法を規定しており、評価項目・測定対象ごとに、適切な分析装置を選択する必要があります。 FTIRでは、潤滑油の酸化・ニトロ化・硫化などの化学的変化や、水分・煤などによる汚染を評価することができます。これらの方法は、ASTM E2412に定められています。 ここでは、FTIRの透過法を用いて、新品と使用済みの自動車エンジン用潤滑油の劣化を評価しました。

2019.10.10