
低分子医薬品
医薬品には有効成分以外に,物性改善のために意図的に添加される成分や,出発原料や中間体,副生成物,分解生成物,また製造工程に由来する試薬や溶媒などの非意図的に生成,混入,残留する成分も含まれています。医薬品合成に用いられる金属触媒もそのひとつで,新規医薬品原薬中の不純物に関するガイドライン(医食審発第 1216001 号,平成 14 年12 月 16 日)1) では,金属触媒は無機不純物として分類され,日本薬局方収載の試験方法又は適切な方法で検出し,開発段階で評価することとなっています。一方,海外に目を向けると,欧州医薬品審査庁(European Medicines Agency;EMEA)は,2008 年 2月21 日に医薬品製造工程に由来する金属触媒や金属試薬の残留量を規制するガイドライン 2) を発行し,14種類の金属に対して許容限度値を設定しました。また,米国薬局方(United States Pharmacopeia;USP)でも,その刊行物である Pharmacopeial Forum34(5)(2008 年 9-10 月)3) に,新たな金属試験法として 31種類の金属に対する許容限度値とその試験方法を提案しており,医薬品中の金属不純物に対する関心が近年高まってきています。金属元素の分析には,原子吸光光度法や ICP 発光分光分析法や ICP 質量分析法がよく用いられますが,多元素の分析では迅速性や簡便性といった点で ICP を用いた分析法が便利です。ここでは,医薬品中の残留触媒の分析としてEMEA のガイドラインで対象となっている金属 14 種類について,ICP 発光分光分析法を用いて分析した例をご紹介します。
2016.07.11