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はじめに

近年,国内外において,安価な輸入玩具や金属製アクセサリーの安全性が社会問題となっています。有害元素のひとつである鉛は,脳障害・神経系への影響,腎毒性・血液系への影響など強い毒性を有しますが,特に,乳幼児に対して,脳障害,神経系への影響が成人よりも顕著に現れることがわかっています。仮に,乳幼児がこれら玩具類を口にくわえたり,なめたり,あるいは,飲み込んだりすることで,健康被害が生ずる危険性があります。 このことを踏まえ,厚生労働省は,平成20年3月31日,食品衛生法施行規則及び食品,添加物等の規格基準の一部改正を行いました。改正後の規格は,比色法による「重金属」から,AA もしくはICP 発光分析法によるヒ素(<25 mg/kg),カドミウム(<75 mg/kg),鉛(<90 mg/kg)となります。玩具の範囲は,その材質によらず,「乳幼児が口に接触する可能性のある玩具」と拡大され,その塗装部分が試験の対象となります。また,金属製玩具アクセサリー(乳幼児が飲み込む可能性のある大きさのものに限る)の鉛(<90 mg/kg)も対象となりました。いずれも,乳幼児が摂取し,有害元素の体内への吸収を想定した溶出試験です。 ICP-AES(ICP発光分析法)は,高感度,かつ同時多元素分析が行えることから,対象元素が多い場合,非常に効率的な分析方法です。今回,島津マルチタイプICP発光分析装置ICPE-9000を用い,市販の玩具およびアクセサリーの分析を行いましたのでご紹介します。

2008.07.27