
EDX-7200
金属リサイクル・都市鉱山
資源の乏しい日本と言われてきましたが,2008 年の独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)の計算により,日本は世界有数の資源保有国であることが指摘されました。天然鉱山の埋蔵量に対して金が 16%の6,800㌧,銀が22%の6万㌧,銅が8%の3,800万㌧,インジウムが 61%の 1,700 ㌧などで,アンチモン,クロム,タンタル,タングステンなどのレアメタルも埋蔵量(保有量)で上位を占めるというものです。これらは一般に都市鉱山 2)とも言われますが,もともと金,銀,銅,白金,パラジウムなど宝飾品や産業で使用されているものは古くからリサイクルが確立しており,金は生産量の 3 分の 1 が,銅は半分がリサイクルされていると言われています。近年,以前にも増して都市鉱山が世間的に注目をあびるようになったのは,貴金属をはじめとする資源の高騰と,昨今のレアアース騒動により,かつてリサイクルされていなかった携帯電話や現在もリサイクルされていない小型家電製品の重要性が盛んに叫ばれるようになったことも一因です。国も鉱物資源安定供給確保に向けて関連予算 1,000 億(2010 年度補正)を計上するなど官民挙げて取り組まれています。 実際のリサイクルはというと,携帯電話から金塊という都市鉱山の象徴的なシーンがテレビ等で紹介されたりしますがそう簡単ではないのが現実です。エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機類の大型家電は家電リサイクル法,自動車は自動車リサイクル法により,携帯電話はモバイル・リサイクル・ネットワークを通して,専門業者で分解,再利用,廃棄埋立処理されます。しかしその他の家電製品(デジタルカメラ,オーディオなどの小型家電)や回収されない携帯電話は一般廃棄物として自治体で回収し廃棄埋立処分されたり,リサイクルショップなどで再販されないものは海外へ輸出されたりと,再利用されないものも多くあります。その理由としては,産業廃棄物にしても一般廃棄物にしても,廃棄物を貯めておくことができない,即ち一定期間に処分されないといけない,また自治体を跨いで移動することができないことから,集めてたくさん一度に解体・分離・製錬・抽出ということがされにくいためです。製錬工場の場合,天然鉱山からの原材料のように,常に一定量かつ一定の品質で安定供給されないと安定した操業ができないため,その反対の性質の廃棄物は難しくなるわけです。更には,鉄・銅などベースメタルにはレアメタル・レアアースが使用されており,それらを一体で考える必要もあります。 そこで,最近はこれらの問題を解決しようと,都市鉱山から人工鉱床という次の段階へ進めようという動きもあります。即ち廃棄物を貯蔵できるようにして解体・分離・選別しながらレアメタルなどを濃縮して人工的な鉱床(鉱脈)にしていき,必要に応じて供給(採掘)するというものです。
2016.07.11
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