
食品・飲料
農産物の生体調節機能の評価
メタボリック・プロファイリング法は,生体内の代謝物を網羅的に測定するメタボローム解析(メタボロミクス)技術の一つで,複数のサンプル間の代謝物パターン(プロファイル)の類似性や相違性を見出すことができるため,医薬品分野において,バイオマーカー探索や病因解析,薬効・毒性評価などへの応用が進められています。また,近年では食品(農林水産物)の品質管理・鑑定・予測やそれら要因解析の新たな手法として,食品中の低分子量成分(代謝物)を標的としたプロファイリング解析が試みられています。食品機能性(三次機能:生体調節機能)研究分野では,食品のどのような成分・複合成分パターンが生体調節機能に関与するかを高精度に捉える科学的評価法が模索されています。メタボリック・プロファイリング法は,複数サンプルの多彩な成分プロファイルを同時に把握できるため,機能性評価の有用な解析ツールとなりえることが期待されますが,現在のところ,食品機能性研究への応用はほとんどなされていません。 そこで本稿では,比較的幅広い代謝物の測定で汎用されている液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を用いたメタボリック・プロファイリング解析によって,農産物の様々な品種の成分プロファイルを取得し,機能性を有する品種の識別化や機能性予測モデルの構築,さらには機能性関与成分や共存成分バランスの解明を試みた研究例をご紹介します。
2016.07.11