反復配列多型(VNTR)分析を利用した結核菌の型別

MultiNA の活用

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はじめに

結核とは結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染症です。そのうち8割以上は肺結核です。結核菌は感染者から発せられたせきやくしゃみなどに含まれて空気中に拡散し,それを周囲の人が吸い込むことにより広がります。これを空気感染といいます。結核は年齢に関係なく人から人へ感染します。 世界では総人口の約3分の1が結核に感染しているといわれています。毎年約940万人が新たに発病し,約180万人が命を落としています1)。 結核菌に感染しても発症するのは1割程度で,健康な人であれば免疫機構により結核菌は撃退されてしまいます。しかし,体の抵抗力が低下している人や乳幼児などでは結核菌が体内で猛威をふるい発病してしまいます。 結核(肺結核)を発病してしまった場合,初期症状は微熱が出る程度で自覚症状は少なく,その後,咳・痰・倦怠感・発熱など風邪と同じような症状が出ます。症状が軽いため,数週間放置してしまうこともあり,結核の発見を遅らせる原因となっています。さらに病状が進むと結核菌は肺を浸食して組織を破壊することで,宿主の呼吸機能を低下させます。 現在では結核に対する治療薬(抗結核薬)があります。しかし,結核は早期診断・治療が重要となります。治療が遅れた場合,呼吸機能障害など後遺症が残ることがあります。また,適切な治療を受けなければ,薬剤耐性菌を生み出すことになり,治療はさらに困難となります。 集団感染や院内感染などが疑われる場合,分離された結核菌株の型別を行うことは,感染源の追跡調査や感染防止策を検討する上で非常に重要な情報となります。

2016.07.11