バイオ医薬品
IgG抗体のN末端アミノ酸配列分析
はじめに
製薬の分野において最近よく耳にする ”バイオ医薬品”という言葉があります。またはバイオ製剤とも言いますが、これは遺伝子組換え、細胞融合、細胞培養などのバイオテクノロジーを利用して開発製造されたタンパク質性医薬品、抗体医薬品などを示しています。これに対して従来の薬は、“低分子医薬品”と呼ばれ、化学合成されています。どちらも化合物なのですが、バイオ医薬品は化学合成されている低分子医薬品と比べると、圧倒的に分子量が大きいのが特徴です。2015 年の世界での全医薬品売上トップ 10 薬剤のうち、実に7製品がバイオ医薬品で占めています。 バイオ医薬品は、薬効が高い、副作用も少ない、適用できる病気の利用範囲も広い医薬品として期待されています。しかし、残念なことに、これまで主流であった低分子医薬品とは違って、バイオ医薬品は、化学合成品のような大量生産ができません。バイオ医薬品の生産には製造、精製、製剤設計、貯蔵などの複数の工程があります。バイオ医薬品の品質を保証するには、製品に関する品質試験を行うだけではなく、原材料や製造プロセスに起因する影響も考慮しなければなりません。そのため、医薬品の製造管理や品質管理においては、化学合成品の低分子医薬品とは異なった対応が求められることになります。現在、バイオ医薬品には、品質評価のためのガイドラインがあります。その中に特性解析が必要とされており、その特性解析の一つに N 末端アミノ酸配列分析があります。この分析は、遺伝子配列から推定される N 末端アミノ酸配列と製造されたバイオ医薬品の N 末端アミノ酸配列とを比較、確認するために行われています。分析手法として、エドマン法を用います。この分析手法は、タンパク質のN 末端側からアミノ酸を順次に切断して、アミノ酸配列を決定する方法で、信頼性の高いアミノ酸配列結果を得ることが可能です。この手法を自動化したシステムがプロテインシーケンサ PPSQTM-51A/53A イソクラティックシステムです。この装置では、目的のタンパク質およびペプチドの N 末端側からのアミノ酸配列を容易に同定することができます。 ここでは、バイオ医薬品の N 末端部アミノ酸配列解析の分析例として、プロテインシーケンサ PPSQ-50A イソクラティックシステムを用いたマウス血清由来 IgG のアミノ酸配列分析例をご紹介します。
2021.03.28