トリプル四重極型LC/MS/MS を用いた下痢性貝毒(オカダ酸群)の分析

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はじめに

下痢性貝毒を含む貝類の取り扱いは、「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の取り扱いについて」(平成 27 年 3 月 6 日付け食安発 0306 第 2 号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)に基づき、機器分析法が導入されることとなりました。オカダ酸(以下略、OA)群に対して 0.16 mg OA 当量/kg の規制値が定められ、規制値を超える貝類は、食品衛生法第 6条第 2 号の規定に基づいて販売等が禁止されています。 2016 年 4 月からは、国産の認証標準物質が安定して入手できるようになりました。これに伴い、2017 年 3 月 8 日付け生食基発 0308 第 2 号及び生食監発 0308 第 9 号『「下痢性貝毒(オカダ酸群)の検査について」の一部改正について』により、1981 年 5 月 19 日付け環乳第 37 号「下痢性貝毒の検査について」のマウス毒性試験は、2017 年 4 月 1 日をもって廃止されました。今回の改正では、ヒトへの毒性が認められる OA 群について規制値が導入され機器分析法の対象となりました。一方、下痢原性を持たない PTX 群、YTX 群は機器分析法の対象外となりました。OA 群は、植物性プランクトンにより産生される毒素であり OA の他に、類似化合物として、ジノフィシストキシン群(DTX1、DTX2 及び DTX3)が含まれます。これら各化合物は、毒性の強さが異なるため、各化合物の毒性を OA の毒性に換算して計算します。その為に、毒性等価係数(TEF)が定めれられており、OA を 1 とすると、DTX1 が 1、DTX2 が 0.5 となります。OA、DTX1、DTX2の各定量結果に、それぞれの TEF 値を乗じて OA 当量値に換算し、その総和を算出します。DTX3 は、ホタテガイの代謝物である脂肪酸とのエステル化合物であり、前処理操作の加水分解過程により、OA、DTX1 または DTX2 に変換されるため TEF 値の設定はありません。 本報では、OA 群の機器分析法(LC/MS/MS)を紹介します。

2019.07.01

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