食品・飲料
トリプル四重極質量分析計を用いたEU規制対象脂溶性貝毒一斉分析
ユーザーベネフィット
- EU-RL-MB(European Union Reference Laboratory for Marine Biotoxins)に準拠した二枚貝中の脂溶性貝毒5成分の一斉分 析が可能です。 - 塩基性移動相を使用し、イエッソトキシン(YTX)が高感度に分析できます。 - オートサンプラーの前処理機能を利用し自動的にマトリクスマッチド検量線が作成できます。
はじめに
貝毒は、主に二枚貝が毒性の高い海産渦鞭毛藻を捕食し、体内に毒が蓄積することで発生します。毒化した貝をヒトが食べると中毒症状を引き起こすことがあります。 EUでは、脂溶性毒素について規制を設けており、規制(EC)853/2004、AnnexⅢSectionⅦChapterⅤでは食用を目的として流通する二枚貝に含まれる脂溶性毒素の最大濃度を、オカダ酸、ディノフィシストキシン群及びペクテノトキシン群は160 µg/kg(オカダ酸当量)、アザスピロ酸群160µg/kg(アザスピロ酸当量)のように定めています。 また、EU規制786/2013のAnnexⅢにおいて生鮮二枚貝中のイエッソトキシン群の許容限界は3.75 mg/kg(イエッソトキシン当量)に引き下げられました。試験法については、(EU)No15/2011において、生鮮二枚貝中の海洋生物毒を検出するための試験法としてEU-RLのLC-MS/MS法が脂溶性毒素群の標準検出法として設定されています。 日本では、食品衛生法に基づき貝毒に関する安全基準、規制値が設定されています(平成27年3月6日付け食安発0306第1号)。二枚貝等の可食部に含まれる毒量は、下痢性貝毒で0.16 mg オカダ酸当量/kg 以下と定められています。現在の検査法は、下痢性貝毒には平成27年3月6日付け食安基発0306第3号、酸性の移動相を使用したオカダ酸とディノフィシストキシン群を検査対象としたLC-MS/MSを使用した機器試験法が通知されています。 本稿では、EUに規制を有する5つの脂溶性毒素群(オカダ酸、ディノフィシストキシン群、ペクテノトキシン群、アザスピロ酸群およびイエッソトキシン群)を代表する5つの標準化合物を既知量添加したホタテ貝の抽出溶液を塩基性移動相を使用したLC-MS/MS法で分析した事例をご紹介します。抽出と分析の手順は、EU-RL-MB(European UnionReference Laboratory for Marine Biotoxins) ver.5 1)の方法に則りました。オカダ酸、ディノフィシストキシン群の総量を得るためには、抽出後、加水分解処理が必要です。本試験では、加水分解なしと加水分解ありのホタテ貝抽出溶液を調製し、それぞれマトリクスマッチド検量線を作成、定量に使用しました。
2022.03.23