食品・飲料
LDTD-MS/MSによる粉ミルク中メラミンの超高速分析
はじめに
メラミンは、粉ミルクやペットフードへの人為的な混入で、大きな社会問題となりました。食品中に高濃度に含まれた場合、メラミン製造時に生じるシアヌル酸と合わせて腎臓結石や腎不全を引き起こす原因となります。一般にメラミンを添加する際には、製品の偽装を目的とすることが多く、添加される量は、非常に高濃度となります。このような偽装を水際で食い止めるには、簡単な試料調製との組み合わせによる高速スクリーニング分析が求められています。粉ミルク中のメラミン分析法としては、夾雑成分を除去する前処理の後、LCMS および GCMS を用いた手法が広く報告されています。本稿では粉ミルク中のメラミンを分析するにあたり、LDTD(Laser Diode Thermal Desorption)イオンソースを LCMS8060 と組み合わせることで、カラム分離を行わない超高速分析を実施しました。 LDTDイオンソースはカナダのPhytronix社(https://phytronix.com/)が開発した超高速スクリーニング分析用のイオンソースです。レーザー照射による試料の気化、その後の APCI によるイオン化によって、わずか数秒での質量分析を可能にします。試料は 96 ウェルプレートにアプライすることで、10 枚のプレートを連続して分析することが可能です。LDTD イオンソースと当社 LCMS-8060 の組み合わせでは、LCMS-8060 にLDTD イオンソースを接続したまま、カラム分離を用いたLC/MS 分析と LDTD による直接分析をメソッドファイルをロードするのみで、それぞれ使い分けることができます。これにより、LCMS-8060 で分析対象となる化合物の MRM最適化を行い、決定した MRM トランジションを使って、LDTD による超高速分析を行うことが可能となります。またその逆に、LDTD による超高速分析により多検体の分析スクリーニングを行い、その結果を受けて特定の試料に対してLC/MS 分析を行うこともできます。このように LDTD イオンソースと LCMS-8060 の組み合わせはその目的に合わせて、二つの全く異なる分析法をスイッチして使用することができます。 本稿では、LDTD イオンソースを接続して、DUIS(Dual ionsource、ESI と APCI)によるメラミンの MRM 最適化を行い、得られた MRM トランジションを LDTD-MS による超高速分析に用いました。また LDTD-MS による超高速分析には、粉ミルク中にメラミンを添加したものを試料として、液々抽出によるメラミンの回収後、LDTD イオンソースと LCMS-8060を組み合わせた質量分析システムを使用しました。ここでは、LCMS と LDTD-MS という二つの分析システムを切り替えて粉ミルク中のメラミンを分析した例をご紹介いたします。
2017.09.10