MALDI-8020
表面支援レーザー脱離イオン化質量分析法(SALDI-MS)を用いたワックスの迅速な特性評価
はじめに
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)は、低分子から高分子に至るまで、多様なタイプの試料の分子量情報を簡便・迅速に得ることができるため、合成および生体高分子の研究開発および品質管理において幅広く応用されています。MALDIでは、試料はマトリックスとよばれるイオン化補助剤の溶液と混合することによって調製します。マトリックスとは、主に低分子の有機化合物であり、ペプチドの測定にはα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸、タンパク質の測定にはシナピン酸といったように、試料の種類に応じて、効率的な脱離およびイオン化を行うための最適なマトリックスを選択する必要があります。 ここでは、試料とマトリックス溶液との混合を必要としない、従来のMALDIよりもさらに迅速な方法を紹介します。この手法では、マトリックスをエッチングした銀箔で置き換えて、その銀箔表面からイオン化を行います。このような手法は表面支援レーザー脱離イオン化質量分析法(SALDI-MS)と呼ばれています。 この方法は、試料調製時間の短縮に加えて、MALDIと比べて低分子領域のバックグラウンドノイズが少ないという特徴があります。 SALDI-MSの分析例として、複雑な脂質混合物からなる種々のキャンドルワックスを分析しました。ミツバチの巣から得られる蜜蝋はパラフィンワックスに比べて高価なため、ロウソクに含まれる蜜蝋の含有量は重要な品質基準とされています。 一方、ステアリンキャンドルに含まれるステアリンは、石油ではなく植物原料で製造されているため、再生可能で環境に優しいパラフィン代替品とみなされています。これらのミツバチまたは植物によって生産される特徴的なパラフィンワックス化合物の主要成分を検出することによって、品質表示をチェックすることが可能となります。
2020.01.26
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