N 末端がブロックされたタンパク質の電気泳動ゲルからの抽出と卓上型MALDI-TOF MS による配列解析

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はじめに

タンパク質の同定は、トリプシン消化による前処理と質量分析計を用いることにより、機器分析の専門家ではなくても簡単に行えるようになってきています。しかし、Mascot(Matrix Science 社製)等の検索エンジンを用いた、単なるデータベース検索によるタンパク質同定ではなく、プロセッシングを受けたタンパク質の末端配列解析や、データベースに登録されていないマイナーな生物種のタンパク質の同定を、質量分析計を用いて行うためには、高価なハイエンドの装置や熟練者による分析技術が未だ必要とされています。また、タンパク質の末端配列解析を行うための手法として、プロテインシーケンサーが一般的に用いられていますが、N 末端がブロックされているタンパク質だと、デブロッキングの前処理が必要となります。この前処理は、タンパク質の種類によってはうまくいかない場合もあり、誰でも使える手法とはなっていません。 近年、MALDI-TOF MS のイオン源内におけるタンパク質のフラグメンテーション(ISD:In-Source Decay)を利用することにより、N 末端がブロックされているタンパク質やデータベースに登録されていないタンパク質の配列解析を行うことが可能となっています。また、ISD は、理論的には試料の質量による制限がないため、トリプシン消化せずに直接大きなタンパク質のシーケンシングを行うことが可能です。しかし、ISD は目的タンパク質の単離精製が必要なこと等から、質量分析の専門家以外が ISD によるタンパク質の配列解析を行うことは、まだ一般的ではありません。 本アプリケーションニュースでは、上記の ISD によるタンパク質配列解析の課題を克服するために、電気泳動ゲルからのタンパク質抽出と卓上型 MALDI-TOF 質量分析計 MALDI8020を組み合わせ、N 末端がブロックされたタンパク質の分子量測定と ISD による配列解析を行った例を紹介します。

2018.08.07

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