MALDI-TOF MSによるタンパク質C末端アミノ酸配列解析の新手法

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はじめに

タンパク質の同定は,タンパク質を酵素消化することにより得られる消化物を質量分析計で分析し,得られたピークリストをデータベース検索にかけることにより行えます。しかし,タンパク質のN, C末端の配列はプロセッシングや翻訳後修飾を受けていることが多いイオンサプレッション効果のため質量分析計で検出することができるのはタンパク質の配列の一部,という二点の理由により,データベース検索時にN, C末端の配列も帰属することは容易ではありません。 タンパク質のN末端部位アミノ酸配列決定は,プロテインシーケンサ(PPSQ-31A/33A)やタンパク質のN末端配列解析キット(ORFinder-NBTM)により行えます。しかし,C末端部位については,既存の手法と比較し,より微量の試料を迅速に分析できる手法が求められていました。 日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH:InternationalConference on Harmonisation of Technical Requirementsfor Registration of Pharmaceuticals for Human Use)で合意され,通知された「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定※」においても,目的物質が末端アミノ酸に関して不均一であることが認められた場合には,タンパク質C末端アミノ酸配列を適切な分析方法により測定することが要求されています。近年,世界の承認医薬品の中でバイオテクノロジー/遺伝子組み換え技術を応用した生物薬品の占める割合は年々増加の傾向にあり,そういう意味からも,タンパク質の末端アミノ酸配列解析の重要性は以前にも増して高くなってきています。 今回,タンパク質C末端部位を選択的に回収し質量分析計によりそのアミノ酸配列を決定する新しい手法の開発に成功したのでその分析例をご紹介します。

2010.02.02