高分解能MALDI-TOF MS “MALDI-7090” を用いたモノクローナル抗体の糖ペプチド解析

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はじめに

バイオ医薬品に活用されている抗体は多くの場合糖鎖修飾を受けています。この糖鎖はグルコースやマンノースなどの単糖が複雑に結合した構造不均一性の高い分子で,且つその複雑な構造にはタンパク質の機能調節という重要な働きがあることが知られています。しかしながら,糖鎖の複雑な構造や,糖鎖がタンパク質のどの部位に結合しているかという情報は,遺伝子にあらかじめ書き込まれているものではなく,タンパク質の生合成過程で働く多くの糖転移酵素の働きにより形作られてゆく情報です。そのため,抗体を産生させる細胞の生育状態によって,同じタンパク質骨格を持っていても異なる糖鎖構造を持っていたり,糖鎖が結合していると予想される箇所に実は糖鎖が結合していなかったりといった現象が見られます。そのため,バイオ医薬品として抗体を生合成させる場合などには,その構造や結合部位を明らかとすることが求められます。現在では多くの場合,この糖鎖の結合部位に関しては質量分析計が用いられています。 ここでは,抗体に結合している糖鎖の構造と結合部位に着目して,高分解能 MALDI-TOF MS ”MALDI-7090” を用いた分析をご紹介します。

2015.06.30