AXIMA PerformanceTM
MALDI-TOFMSによるリン酸化解析(2)Seamless PSDによるリン酸化ペプチドの配列解析
はじめに
近年,タンパク質のリン酸化とリン酸化部位の解析に質量分析が適用されています。様々なタイプのMS/MS(目的のイオンから生じたフラグメントイオンを検出する手法)でリン酸化部位が決められていますが,その多くはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)をベースとした装置構成です。一方でMALDI法は汎用性・簡便性を有しているにもかかわらず,リン酸化部位の解析に関する有用性はあまり知られていません。ここでは,seamless PSD(sPSD)を用いたリン酸化修飾部位の解析方法について示します。 MALDI-MS/MSによるアミノ酸配列解析でよく用いられるCID(衝突誘起解離)法では,不活性ガスとの衝突により壊れやすいリン酸基の脱離が著しく,リン酸化部位の情報を得るのが困難です。MS/MS測定において不活性ガスを用いないsPSDにすると,ある程度リン酸基脱離が抑制されたMS/MSスペクトルが得られます。 フラグメントイオンを帰属した結果,C末端フラグメントであるy-ionが優先的に生成していることが分かりました。また,フラグメントイオンからのリン酸基脱離も観測されましたがその強度は強くなく(図中y7-98),リン酸化アミノ酸残基の質量から全配列を読み解くのに十分なMS/MSスペクトルが得られました。 このような効果はDHBを用いたときに特に増幅されることが知られていましたが1),従来のPSDではフラグメントイオンの検出感度が低く,あまり実用的ではありませんでした。sPSDは従来のPSDに比べ,フラグメントイオン生成効率の良さが大きな特徴です。そのため,実用的な感度でこのようなリン酸化ペプチドのMS/MS測定が可能になりました。
2008.10.22
関連製品
一部の製品は新しいモデルにアップデートされている場合があります。