医薬品中のイオン分析(その4)イオンクロマトグラフィーによるカウンター陰イオンの分析

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はじめに

カウンターイオンの 違 い に よ り, 医 薬 品 有 効 成 分(Active Pharmaceutical Ingredients : API)としての物理化学的・薬物動態的な性質が変わるため,医薬品開発段階では様々なカウンターイオンが選択され,最適な塩が選択されています。また,合成段階で使用する触媒やイオンなどの無機不純物の残存が製品の溶解性や安定性などに影響を及ぼすことがあり,不純物としてイオンを分析することも非常に重要です。合成された API から不純物を取り除くために,一般的に HPLC を用いた分取・精製が行われており,その移動相には後処理の容易さから酢酸,ギ酸,トリフルオロ酢酸やその塩が添加物として使用されています。また,ペプチドの固相合成では,合成したペプチドの固相からの切り離しにトリフルオロ酢酸が使われており,トリフルオロ酢酸が主成分ペプチドのカウンターイオンとなります。多くの場合,その後,酢酸や塩化物イオンにより塩置換されて使用されます。よって,これらのイオンがAPI のカウンターイオンや不純物イオンとなることがあります。 ここでは,医薬品中の酢酸,ギ酸,塩化物とトリフルオロ酢酸イオンの分析例をご紹介します。

2021.03.28