食品・飲料
原子吸光法によるナトリウムの測定
はじめに
ナトリウムは地殻中に酸素,ケイ素,アルミニウム,鉄,カルシウムに次いで多く存在しており,主に岩塩(NaCl)やチリ硝石(NaNO3),天然ソーダ(Na2CO3)等の鉱石として産出されます。また,海水には約34g/Lの塩類が含まれますが,ナトリウムイオンは塩化物イオンに次いで多く,11g/L程度溶存しています。 金属ナトリウムは,塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カルシウムの混合融解塩の電気分解により得られます。ナトリウムは,銀色の非常に柔らかい金属で,銀,銅,金に次いで大きな電気伝導度を持ちます。また,反応性に富み,水と激しく反応し,熱と水素ガスを発しながら水酸化ナトリウム(NaOH)に変ります。空気中において融点以上に加熱すると燃焼し淡黄色の過酸化ナトリウム(Na2O2)へと変化します。高温・高圧では,更に反応が進み,白色の超酸化物(NaO2)になります。 ナトリウムは,強い還元性を持ちますが,これを利用して,植物油の炭素二重結合部分に水素を添加したものがマーガリンです。また,融点が低く液体になり易い,熱伝導率が大きい,等の性質を有するため,原子炉から熱を取り出すための冷却材に用いられます。 ナトリウムからは種々の有用な塩類がつくられます。例えば,水酸化ナトリウムは,紙・パルプや石鹸などの化学工業分野で用いられます。なお,水酸化ナトリウムは吸湿しやすく潮解性を持つため,取扱いに注意が必要です。炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)は,中和剤や胃の制酸剤,重曹(ふくらし粉)などに使用されています。塩化ナトリウムは,調味料としての用途以上に,水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム,金属ナトリウム等の原料になります。 生体のナトリウムに関して,植物がナトリウムよりもカリウムを多く含有するのに対し,動物ではナトリウムが多く含まれます。人体には約1.5g/Kgのナトリウムが存在しており,その中で血液に0.9g/100mL含まれる塩化ナトリウムは,赤血球の形態の維持や細胞のイオンバランスの維持に関係しています。 ナトリウムの測定は,環境をはじめ,栄養表示の関連から食品の業界,また,ナトリウムは環境中に多く存在する元素であるため,汚染の指標として,半導体や電子材料等の工業分野でも広く行われています。
2021.03.29