ダウンロード

はじめに

食品をはじめとした生物由来の試料は極めて多くの成分を含有しており、それらを包括的に解析することでロットや製法の違いが試料に与える影響を明らかにしたり、成分パターンから未知サンプルの特徴を予測したりする研究開発が、昨今食品分野を中心に盛んに行われています。これは一般にメタボロミクスと呼ばれ、多変量解析や機械学習などの解析手法と併せて非常に需要の高い分析手法の一つとなっています。 メタボロミクスには、LC-MS や GC-MS などの質量分析計が必須のツールとされてきました。質量分析計は優れた定性能力を持ち、検出された成分の同定において非常に大きな威力を発揮します。一方で、装置に汚れが蓄積しやすい/装置のチューニング情報を更新するとその前後でデータの質が大きく変わってしまうという特徴があり、長期間にわたって大量のデータを取るには適さないとする向きもあります。特に GC-MS では代謝物をトリメチルシリル化(TMS 化)して測定を行うことが一般的ですが、TMS 化した化合物のピークは、誘導体化のあと時間が経つにつれ強度が減衰していくものが多く、よい測定結果を得るためには、誘導体化後なるべく早く分析を終えることが重要なポイントとなる場合があります。 本稿では、このような GC-MS によるメタボロミクスが、GC-FID で代替可能であるかを検討し、GC-MS と相当数の化合物ピークを検出できること、それらのピーク強度が、時間単位/日単位ともに GC-MS よりも安定であることを見出しました。このような GC-FID の安定性は、メタボロミクスにおいて長期間にわたって大量のデータを取得する際に、極めて有効なツールとなる可能性が示唆されました。

2019.08.28