原子吸光法による細胞培地中金属元素の直接分析

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はじめに

抗体医薬品の原薬は、主に CHO 細胞を培養することにより産生されます。培養中の細胞代謝や産生される抗体の一次構造は、培地の栄養成分(糖やアミノ酸など)および金属元素の濃度に影響を受けることが近年報告されています。例えば培地中の金属元素について、Zn は細胞内に取り込まれて少なくとも 300 種の酵素や転写因子の補因子として働くこと 1) 、IgG に付加される糖鎖の構成糖が培地中の Mn/Zn 比に応じて変化すること 2) などが挙げられます。そのため抗体医薬品の品質を一定に保つうえでは、培地中の金属元素濃度をモニタリングすることが重要と考えられます。 これまで培地中金属元素の測定においては、ICP-MS やキレート定量法といった手法が用いられてきました。しかし、ICP-MS はイニシャル/ランニングコストが高く、キレート定量法では、特異性の高いキレート剤を配位させる必要があるため元素ごとにサンプルの前処理が必要であり、煩雑さに課題があります。 そこで我々は安価かつ簡便に複数の金属元素を分析できる原子吸光法を用いて、培地中の金属元素を測定しましたので、その内容を紹介します。

2020.07.31