透明な有機薄膜のレーザー顕微鏡観察/OLS,SFT
-マルチレイヤー観察機能-

レーザー顕微鏡(LSM)は広い視野の3D形状観察と測定が簡便にできることから,薄膜の厚み計測や形状評価に利用されています。しかし,透明薄膜の場合,LSMでは観察と測定が “正しくできない” と従来は思われてきました。今回,透明膜でもLSM観察を可能にする3D測定レーザー顕微鏡 OLS4100とマルチレイヤー機能による透明膜の観察事例を,走査型プローブ顕微鏡(SPM)での検証とともに紹介します。 

Fig.1 透明なレジスト膜試料のSPM 3D像 128μm

Fig.1 透明なレジスト膜試料のSPM 3D像 128μm

透明なレジスト膜のSPM観察

Fig.1に,試料としたガラス基板上の透明レジスト膜のSPMによる視野10μmの3D像を示します。SPMの場合は透明体の性質に関わらずに形状観察ができ,このレジスト膜の厚さが160nmであることがわかります。

Fig.2 透明なレジスト膜のレーザー反射強度

Fig.2 透明なレジスト膜のレーザー反射強度

透明膜試料とLSM観察

LSM観察は試料からの正反射を捉える手法です。反射率は表面(界面)の粗さと屈折率に密接に関連しますが,ガラス基板やウェハ基板などの上の透明膜では平滑な基板からの正反射成分が大きくなります。一方,透明膜表面から正反射する成分は小さくなります。 このような場合,LSMは試料の反射光量が最も大きい位置を焦点位置とするために透明膜表面が捉えられない場合が多く発生します。

 同じ試料のレジスト膜部のLSMの正反射ピークの深さ方向の強度分布(断面観察像)をFig.2に示します。LSMでは透明レジスト表面よりも基板からの反射が強いことがわかります。このため,この透明膜は通常のLSMでは基板を捉えてしまい,正しい形状を得ることが困難です。

マルチチレイヤー機能

Fig.3にマルチレイヤー機能の原理図を示します。このマルチレイヤー機能は複数の反射光のピークを認識してそれぞれを焦点位置として採用します。これにより透明膜のレイヤー(層)ごとの観察と3D測定や面膜厚測定が可能です。

Fig.3 マルチレイヤー機能の原理図

Fig.3 マルチレイヤー機能の原理図

Fig.4 マルチレイヤー機能を用いたLSM3D像 128μm

Fig.4 マルチレイヤー機能を用いたLSM3D像 128μm

マルチレイヤー機能を用いたときの透明レジスト膜の形状観察結果をFig.4に示します。基板からの反射よりも弱いレジスト膜表面からの反射ピークをマルチレイヤー機能が捉えることで透明薄膜のSPMの結果と合致した段差形状が得られています。

 

>> 透明膜測定フィルターを用いた精密な有機薄膜表面の形状観察

>> Application News S05
透明な有機薄膜のレーザー顕微鏡観察は可能か?
-マルチレイヤー機能と透明膜測定フィルターを用いた有機薄膜の形状観察-
Is it possible to observe the transparent organic thin film by LSM?
Observation of the shape of the transparent organic film using the multi-layer function and the optical filter with LSM


3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000のマルチレイヤー機能と透明膜測定フィルターは従来のLSMでは困難な透明薄膜の形状観察,膜厚計測を可能にします。