レーザー顕微鏡(LSM)は広い視野の3D形状観察と測定が簡便にできることから,薄膜の厚み計測や形状評価に利用されています。しかし, LSMでは透明薄膜の観察と測定が “正しくできない” と従来は思われてきました。今回,透明膜でもLSM観察を可能にする3D測定レーザー顕微鏡 OLS4100と専用の透明膜測定フィルターを走査型プローブ顕微鏡(SPM)での検証とともに紹介します。 

透明膜測定フィルター

透明膜測定フィルターは,LSM観察における正反射成分にかえて表面からの散乱光を取得するOLS専用の光学フィルターです。光路中に透明膜測定フィルターを簡単に挿入することで散乱光の検出が支配的に行なえます。これは光学的な性質を利用した手法であるため,マルチレイヤー機能でも困難な,厚さが数10nmという透明超薄膜や最表面の形状観察が容易になります。

精密な有機薄膜表面の形状観察

レーザーの透過率が大きく,きわめて透明な有機薄膜観察に透明膜測定フィルターを適用した例を紹介します。
Fig.1(A)にガラス上の透明有機薄膜のSPMによる表面形状3D像を示します。この試料の透明膜測定フィルターを用いないときの観察結果をFig.1(B)に示します。この結果はSPMとは合致しません。とくに中央部の凹形状部では下地からの反射の影響から凹部中に盛り上がった形状が誤って得られています。透明体のLSM観察の場合はこのように誤った形状を取得する場合があり注意が必要です。透明膜測定フィルターを用いたときの結果をFig.1(C) に示します。散乱光の取得により基板からの反射と凹形状の影響を受けずにSPMと合致した形状像が得られています。

 
Fig.1 透明有機薄膜の表面形状観察

 

Fig.1 透明有機薄膜の表面形状観察

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000のマルチレイヤー機能と透明膜測定フィルターは従来のLSMでは困難な透明薄膜の形状観察,膜厚計測を可能にします。