UV TALK LETTER vol.6 分光光度計の光源

UV-Basic

UV TALK LETTER vo6(2010)
今回は,UV Talk letter Vol.2の「分光光度計の構造」で解説した分光光度計の重要な要素の一つ,「光源」について解説します。

1.光源の条件

分光光度計の光源として望ましい条件として,
a) 広い波長範囲に渡って明るいこと
b) 時間的に安定していること
c) 寿命が長いこと
d) 安価であること

が挙げられます。

「a) 広い波長範囲に渡って明るいこと」は,「明るい(高い輝度を有する)」 と 「測定波長範囲内で一様な明るさ(一様な分光分布)」 を要求しています。
「高い輝度を有する」 は,高いS/N比の測光値を得るために必要な要求となりますが,一般的には光源の輝度を高めると別の条件である「c)寿命」 は短くなるので,その兼ね合いを考慮する必要があります。
実際の測定では検出器の感度特性等も重畳しますが,「一様な分光分布」 は測定する波長範囲の中で一様なS/N比をもつ測光値を得る上で重要な条件となります。

2.光源の種類

上記条件を個々に満たす光源は多数ありますが,全てを完全に満足するような光源はないのが現状です。多くの分光光度計では可視域用としてのハロゲンランプと,紫外域用としての重水素ランプを装備し,設定波長に合わせ切り換えて使用しています。
これには,一つの光源で広い波長に渡って「高い輝度を有する」,「一様な分光分布」をカバーする事は難しいという理由もありますが,放射波長領域の異なる光源を切り換えて使用することで,分光器に入射する余分な光を少なくし,迷光量(参1)を減少させるという利点も含まれています。
その他に,分析対象や目的に合わせてキセノンランプやキセノンフラッシュランプなどを用いる装置もあります。また,多数の輝線スペクトルを有する低圧水銀ランプは,分光光度計の波長校正用として有用です。

参考1) 迷光(量)とは・・・
迷光は「波長選択部から出射する光強度に対する設定波長以外の波長の光強度の総和の比率」(JIS K 0115より)を意味します。 例えば,試料に入射する単色光の中に迷光が0.1 %含まれているとすると,ある波長で透過率1 %(吸光度2)となる試料を測定した場合,迷光が加わることで透過率1.1 %(吸光度1.959)となり,吸光度で約2 %の誤差が生じる

(1)ハロゲンランプ

図1 ハロゲンランプの発光強度分布(3000K)
図1 ハロゲンランプの発光強度分布(3000K)

ハロゲンランプは一般的な白熱ランプと同じで,フィラメントに電流を流すことでフィラメント自体が高温となり発光します。フィラメントの材料として使用されているタングステンは,高温になると蒸発してしまいます。そのため,一般的な白熱ランプでは不活性ガスを電球バルブに封入することでその蒸発を防いでいます。

ハロゲンランプは不活性ガスとともにハロゲン化物を封入することで,蒸発したタングステンをフィラメントに戻すハロゲンサイクル(参2)を発生させ,寿命の長い光源を実現しています。また,それは蒸発したタングステンが管壁に付着する(黒化)ことも抑えることとなるため,長時間にわたって明るい光源を実現することにもなります。

図1に色温度3000Kのときの分光強度分布を示します。使用できる波長範囲は色温度にも影響を受けますが,350 nm~3500 nm程度の範囲となります。
ハロゲンランプは時間的に安定し,長寿命(2000時間程度)で比較的安価なために,分光光度計の光源の条件を高いレベルで満たしているといえます。

参考2) ハロゲンサイクルとは・・・
高温となり蒸発したタングステンは,温度の低い管壁付近でハロゲンと結合してハロゲン化タングステンとなります。ハロゲン化タングステンは浮遊しながら管内の対流により移動し,高温のフィラメント付近でハロゲンとタングステンに分離します。分離したタングステンはフィラメントに付着し,ハロゲンは蒸発したタングステンと再び結合することになります。この反応の繰り返しをハロゲンサイクルといいます。

(2)重水素ランプ

重水素ランプは数百Paの重水素をバルブに封入した放電光源です。熱陰極を用いることで安定かつ確実なアーク放電を実現しているため,放電開始前には10秒程度の予熱時間が必要となります。
また,点灯電源も複雑で大形となり,ハロゲンランプと比較すると高価となりますが,数少ない安定した紫外域の連続スペクトル光源です。

図2 重水素ランプの発光強度分布
図2 重水素ランプの発光強度分布1)

重水素ランプの発光波長は400 nm以下の短波長側にあります。 短波長側の使用限度は,窓の材料によって決まります。図2に窓材に合成石英とUVガラスを使用した例を示します。

長波長側の使用限度は400 nm付近となりますが,長波長側へ向かう減衰が緩やかであるため,400 nm以上の光を使用することも可能です。400 nm以上の範囲には,輝線スペクトルも多数存在しています。その中でも486.0 nmと656.1 nmの輝線スペクトルは特に強く(図5参照),分光光度計の波長校正に利用することができます。

(3) キセノンランプ(キセノンアークランプ)

キセノンランプはキセノンガスをバルブに封入した放電光源です。キセノンランプは点灯する方法によって直流型と交流型に分類されます。電極の温度が高くなりすぎると,材料として使用されているタングステンが蒸発して管壁に付着して明るさを損ねることになります。特に陽極は温度が高くなることから,直流型では陽極側を陰極側より大きくすることで,陽極側の熱容量を大きくしています。交流型は両極が交互に陽陰極になるためどちらも同じ大きさになります。そのため,交流型は直流型よりタングステンが蒸発しやすいという欠点がありますが,点灯装置において電流を整流する必要が無いので小型で安価にできる利点もあります。
キセノンランプは太陽光に似た分光分布を示し,図3のように紫外域から近赤外域まで連続したスペクトルを与えます。価格や出力変動といった面でハロゲンランプや重水素ランプより劣る部分もあり,一般的な分光光度計にはハロゲンランプ等が使用される事が多いですが,輝度が高いことから,大きな光強度を必要とする場合(例えば分光蛍光光度計)にはキセノンランプが用いられます。

図3 キセノンランプの発光強度分布
図3 キセノンランプの発光強度分布2)

(4) キセノンフラッシュランプ

パルス点灯させることで,小型で発熱を少なくしたキセノンランプです。用途に応じて直管形,U形等があり,石英ガラス管(あるいは高シリカガラス管)に電極を封止し,キセノンガスが封入されています。
ただし,アークランプよりさらに出力変動が大きく再現性が悪いため,安定したデータを得るためには出力されるデータを積算して使用する必要があります。そのため,アレイ検出器と組み合わせることで,短時間での連続スペクトル取得を目的とした装置(例えば色彩測定器など)に用いられます。

(5) 低圧水銀ランプ

図4 低圧水銀ランプのスペクトル分布特性
図4 低圧水銀ランプのスペクトル分布特性3)

低圧水銀ランプは,水銀の共鳴線(254 nmまたは185 nm)を効率よく放射させるために,点灯中の水銀蒸気圧が低圧(100Pa以下)になるよう設計された放電ランプです。図4に低圧水銀ランプのスペクトル分布を示します。
低圧水銀ランプには,発光する紫外線をそのまま使用するランプと,別の波長に変換するための蛍光体を利用したいわゆる蛍光ランプがあります。
分光光度計では波長表示値の校正に水銀の輝線を使用します。校正に使用される輝線としては,254 nm,365 nm,436 nm,546 nmなどがありますが,測定時のスリット幅(スペクトルバンド幅)に注意する必要があります。例えば364 nmの輝線は3重線(3つの輝線が近接している)となるので,スペクトルバンド幅が0.5 nm以下でないとそれぞれの輝線を正確に測ることはできません。

3.光源の切り換え

図5 UV-1800で測定した光源のエネルギー分布
図5 UV-1800で測定した光源のエネルギー分布

前述のように,多くの分光光度計でハロゲンランプと重水素ランプが使用されています。 図5は紫外可視分光光度計UV-1800で測定したそれぞれのエネルギー分布を示します。光源の切り換えは,ハロゲンランプと重水素ランプの放射強度がほぼ同等となる300 nm~350 nm付近でおこないます。
光源を切り換える方法としては,ランプ自体を移動させる方法と反射鏡を回転させる方法があります。

図6 光源の切り換え方式
図6 光源の切り換え方式

反射鏡を回転する方法を図6に示します。ハロゲンランプと重水素ランプの間にある反射鏡の向きを変更することで,分光器に入射させる光源からの光束を切り換えています。
UV-1800の場合,それぞれの光源に対して最適な反射鏡の向きは,電源投入後におこなわれる初期設定動作の中で自動的に調整されるため,ランプ交換による位置調整は不要となっています。


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