UV TALK LETTER vol.3(2009) アプリケーション =カラー測定=

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1. 色

ヒトが目で物体を観察した場合,光源から照射された光は物体を反射(もしくは透過)して網膜内にある数種類の視細胞で吸収されます。視細胞で吸収された光の割合が脳に伝わり,色として感じます。実際には単純に吸収された光の割合だけではなく神経伝達を通じさまざまな処理が行われ,ヒトは色を感じているとされています。 ヒトが感じる色を数値で表す一つの方法がカラー測定です。カラー測定には,図1に示すように「照明」,「物体の分光特性」,「ヒトの目の分光感度特性」の三つが関係しています。照明の分光分布と目の分光感度特性(等色関数)はJIS規格で規定されていますので,物体の分光反射率がわかれば物体の色の値が計算できることになります(光が試料を透過する場合には分光透過率で計算が可能ですが,これ以降は主に分光反射率で説明を行います)。さらに詳細を説明しますと照明の分光分布と等色関数についてJIS規格では複数定められていて条件ごとに変えて計算を行います。照明を変えることで色が変わることはよく経験しますが,このことから照明の分光分布は照明ごとに異なる係数が設定されています。また網膜の感度分布特性などの関係から視野(視野角)によっても色は変わります。このためJIS規格では視野によって異なる等色関数が設定されています。 カラー測定に必要な波長範囲は380〜780nmですが,これはヒトが目で感じることができる波長に相当します。紫外可視分光光度計ではこの波長範囲で分光反射率を測定し,演算を行うことで色の測定(カラー測定)が可能です。色の測定を簡単に行うためのソフトウェアとしてカラー測定ソフトウェアがあります。

カラー測定とは

図1 カラー測定とは

2. 色の測定(カラー測定)

紫外可視分光光度計を用いたカラー測定では,まず物体の分光反射率を測定します。測定後に照明の分光分布,得られた物体の分光反射率,等色関数を用いて演算を行い,色を数値として表します。カラー測定ソフトウェアには,照明の分光分布と等色関数の値が内蔵されているため,分光反射スペクトルを測定すると同時にカラー測定値が得られます。 カラー測定の基本となる値は三刺激値XYZです。JIS Z8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」において三刺激値XYZは以下の式(1)に基づいて計算されます。

ここで
 S(l): 照明の分光分布の波長λにおける値
 x(l),y(l),z(l): XYZ表色系における等色関数の値
 R(l): 試料の分光反射率
 Dl: 計算のための波長間隔

三刺激値XYZ以外にも色を表す表色系はいくつか知られています。カラー測定ソフトウェアで計算可能な表色系には三刺激値XYZ,色度座標x,y,ハンター(Lab)表色系,L*a*strong*表色系,L*u*v*表色系,U*V*W*表色系などがあります。三刺激値以外の表色系は三刺激値XYZをもとに計算が行われます。

3. 色差

表色系は色を数値で表現する方法ですが,色差は,色の違いを表す数値になります。色差の計算では色の差を数量的に表すためによりヒトの感覚に近いUCS(Uniform Color Space・・・均等色空間)表色系が使われます。代表的なUCS表色系がL*a*strong*表色系です。L*で明度を表しa*,b*で色相と彩度を表します。JIS Z8729「色の表示方法−L*a*strong*表色系及びL*u*v*表色系」にはL*a*strong*表色系の計算方法が示されています。 色差は,物体色(試料)ごとのL*a*strong*値を用いて計算されます。L*a*strong*表色系における色差DE*abは,JIS Z8730「色の表示方法−物体色の色差」において以下の式(2)で求められます。


ここで2つの物体色(試料)の座標をそれぞれL*1a*1b*1,L*2a*2b*2とすると

式からわかりますように色差は,L*a*strong*表色系色空間の2点間の距離に相当します。色の違いが大きければ大きいほど色差は数値が大きくなります。 さらにカラー測定ソフトウェアではこれらの表色系による表示,色差の表示以外にも白色度指数,黄色度,主波長,刺激純度などの計算も可能です。

4. カラー測定の条件設定

カラー測定では計算のためにいくつかの条件を設定します。条件には照明(光源),視野(視野角)があります。 まず色は試料に照射する照明によって変わりますので照明の設定が必要です。照明としてはA,B,C,D65などがあげられ,JIS規格では標準イルミナント,補助標準イルミナントと呼ばれています。これらの照明はそれぞれ分光分布が異なります。例えば標準イルミナントAは白熱電球で照らされている物体色を計算する場合に用いられ,紫外域を含む昼光で照らされている物体色の計算には標準イルミナントD65が用いられます。カラー測定ソフトウェアでは標準で用意されている照明以外での計算を行うためにユーザー定義照明の設定も可能です。 試料を近くから観察した場合と遠くから観察した場合とを比較しても,やはり色が変わりますので視野の設定が必要です。視野は視角が4°以下の場合は平均視野角2°(遠くから観察した場合の色)とし,視角が4°以上の場合は平均視野角10°(近くから観察した場合の色)とし計算を行います。2°視野と10°視野ではそれぞれ等色関数が異なります。 スペクトルを読み込んでいる状態で計算用パラメータの設定を変更した場合は,表に示されているカラー測定値が直ちに更新されます。 計算用パラメータ画面を図2に示します。

計算用パラメータの測定

図2 計算用パラメータの測定

カラー測定ソフトウェアでは,計算項目は最大6項目まで同時に表示可能です。スペクトルを読み込んでいる状態で計算項目を変更するとカラー測定値が直ちに更新されます。

計算項目の選択

図3 計算項目の選択

5. 分光反射率の測定

測定用パラメータの設定

図4 測定用パラメータの設定


分光反射率の測定の際には,まず測定パラメータの設定を行います。 測定用パラメータの設定では測光値の設定(透過率/反射率の選択),波長範囲(通常測定範囲として380〜780nmが指定されています),スキャン速度,スリット幅,サンプリングピッチなどを選択します。 測定用パラメータ設定画面を図4に示します。

試料を積分球に設置した様子

図5 試料を積分球に設置した様子

物体の分光反射率の測定には積分球が多く用いられます。図5には試料を設置した積分球の写真を示します。図のように試料を設置して分光反射率の測定を行います。 積分球を用いた分光反射率の測定例を図6,7に示します。図6はピンク色の紙の反射スペクトル測定結果,図7は,水色の紙の反射スペクトル測定結果を示します。対照となる標準白色板は硫酸バリウムを用いました。

ピンク色の紙の反射スペクトル測定結果

図6 ピンク色の紙の反射スペクトル測定結果

水色の紙の反射スペクトル測定結果

図7 水色の紙の反射スペクトル測定結果

カラー測定値の表示

図8 カラー測定値の表示

可視光領域では400nm〜500nmが青色系の光,500nm〜600nmが緑色系の光,600nm〜700nmが赤分光反射率から計算されたカラー測定値は表の形で表示されます。もちろん過去に測定した分光反射率をもとに計算することも可能です。 図8にカラー測定結果の表示例を示します。計算の条件は,照明C,2°視野で行いました。1行目に図6のピンク色の紙のカラー測定結果(L*=79.45,a*=11.50,b*=4.48:図の赤色枠参照),2行目に図7の水色の紙のカラー測定結果(L*=81.71,a*= -11.56,b*= -5.95:青色枠参照)が表示されています。
カラー測定ソフトウェアでは色差の表示もできます。色差はサンプルIDが0に設定された試料(緑色枠参照)を基準試料として計算が行われます。ここではピンク色の紙を基準試料としました。ピンク色の紙と水色の紙の色差は,DE*ab = 25.41(黒色枠参照)との結果が得られました。

チャート表示

図9 チャート表示

得られたカラー計算結果を視覚的にわかりやすく表示する機能としてチャート表示があります。チャート表示では得られたカラー計算結果をもとにチャート図で表示させることができます。図9にチャート図による図8のカラー測定結果の表示例を示します。 図の左側のL*グラフでは,データ点が上方にあるほど色が明るく,下方にあるほど色が暗いことを示します。右側のa*strong*グラフではデータ点が円の中心にあるほど色が鈍く,外周にあるほど色が鮮やかであることを示します。また中心からの動径角度が色味を表し,例えば円の中心から見て右上方向は赤色系の色であることを示します。

6. データの補正

物体反射色の測定(反射でのカラー測定)の際に必要な分光反射率の測定には標準白色板を用います。標準白色板としては硫酸バリウム,酸化マグネシウム,アルミナ,フッ素系樹脂などが用いられますが総じて測定波長範囲の反射率は高く,同じ装置を用いての色の比較には問題はありません。しかしながら標準白色板は完全拡散面でなく反射率は100%ではありませんのでサンプルを測定して得られる分光反射率は相対値となります。異なる装置で測定した測定結果の比較などを行う場合にはより精度の高い測定が必要です。精度の高い測定をする場合には分光反射率を完全反射散乱面に対するスペクトル比反射率に補正しなければなりません。この補正のための機能として白板補正があります。校正された標準白色板の分光反射率を入力することで測定された分光反射率が補正され完全反射散乱面での測定結果と同様の結果が得られます。 一方物体透過色の測定(透過でのカラー測定)の場合,厚み補正というものがあります。試料の厚みが変われば分光透過率が変わり,カラー測定の結果も異なる結果となります。色を求めたい厚み(標的厚み)でどのような透過色をしているかを求める機能が厚み補正です。 厚み補正では,実際に測定した測定厚み,色を求めたい標的厚み,表面反射率(もしくは屈折率をもとに計算した表面反射率)を入力することで厚みが異なるサンプルの透過色の比較が可能となります。 厚み補正は以下の計算を行っています。(図10参照)

厚み補正の概念図

図10 厚み補正の概念図

1)測定した試料の表面反射率を除いた内部透過率を求める。
2)内部透過率を厚み補正し最後に表面反射率を付加する。

実際の厚み補正計算は以下の式(3)を用いて各波長の透過率T0を求めます。

ここで
T1: 実測の透過率(%)
T1' : 実測の透過率(%)に対する内部透過率(%)
r : 試料の表面反射率
t1: 実測の試料の厚さ・・・・測定厚み(mm)
t0: 透過率を求めたい試料の厚さ・・・・標的厚み(mm)
T0: 求めたい透過率(%)

なお表面反射率のかわりに,屈折率nが与えられている時は

より計算したものを入力します。 ガラスのように屈折率が1.5とすると表面反射率は4%となります。
厚み補正後の各波長の透過率を求めた後,カラー計算が行われます。

7.まとめ

カラー測定はJIS規格で細かく計算方法や係数が決められており,分光反射率がわかれば表計算ソフトウェアを用いて計算することも不可能ではありません。しかしながら照明,視野が違えばそれぞれ異なる係数が必要となり膨大な入力を必要とします。 カラー測定ソフトウェアを用いていただければ条件を選択し,分光反射率を測定していただくだけで簡単にカラー測定結果を得ることができます。


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